公表をめぐり激突
モラー特別検察官が報告書の中で、トランプ氏の一連の疑惑への関与を明確にするのかは不明だ。だが、司法省は「現職の大統領は訴追されない」という長年の政策を守っており、仮にトランプ氏の犯罪性が濃厚であっても、大統領が訴追されることはないだろう。しかし、訴追されなくても報告書で大統領の犯罪が明確に指摘されれば、大統領の政治的打撃は計り知れず、再選戦略にも大きな影を落とすことになる。弾劾への動きも加速するだろう。
民主党は公表が近づくにつれ、報告書を編集することなく、全面公表を要求し、これに反対するホワイトハウスや司法省との間ですでに激しい綱引きが始まっている。「特別検察官規定」(1999年策定)によれば、特別検察官は捜査の終了に伴い、報告書を司法長官に提出しなければならない。
報告書を受理した司法長官はその「要旨」を議会に送らなければならない決まりだが、何を削除し、盛り込むのかは長官の裁量に委ねられている。長官は報告書にある捜査のソースや方法など極秘情報が漏洩しないよう、また大陪審での証言情報が漏れないように配慮することになっている。
要は報告書の内容公表をめぐっては司法長官の裁量によるところが大きく、政治的に利用される懸念があるということだ。民主党が心配しているのは、司法長官に就任したばかりのウイリアム・バー氏が就任前にトランプ大統領の主張に沿うようなメモを書いていた点だ。
バー長官はメモで、コミーFBI長官の解任は司法妨害に相当するものではないという主張を展開し、このこともあって大統領に新長官に指名された。バー氏は上院の長官承認審議で、「特別検察官規定」に従って報告書の扱いを進めるとし、政治的な配慮が入る可能性を否定した。
報告書が司法長官の手元に届いて議会に要旨を送るまで数日から1週間必要とされるが、27日からはトランプ大統領が成果の誇示を狙っている米朝首脳会談が開催される日程となっており、報告書の公表はこの首脳会談の後になるのではないかと見られている。
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