変動的なノーベル賞の賞金額
ノーベル賞は、アルフレッド・ノーベルが、自身が亡くなる前年の1895年に書き残した遺言書によって設立されました。ダイナマイトを開発したことで莫大な財産を手に入れたノーベルでしたが、その発明が大量殺人兵器と評されたことに晩年失望していたそうです。そのため、ノーベルは全財産の94%である約3100万kr(現約1688万kr)を遺贈し、その毎年の利子を物理学、化学、生理学/医学、文学そして平和事業でその年最も人類に貢献した人物に贈呈するように、と定めたのです。こうして、ノーベルの死から5年後の1901年に第1回ノーベル賞が開かれ、69年には経済学賞が追加され、今日に至ります。
ところで、皆さんは、ノーベル賞の賞金額がどれほどかご存知でしょうか。
先述のように、資金源はノーベルが財団に託した基金の利子ですので、実は世界の経済事情によってその額は左右します。1900年代中頃は随分と賞金額が減り、1923年は最少額の約115000krでしたが、90年代に入ると急激に持ち直し、2001年から現在までは各賞1000万kr(約1億1500万円)が保たれています。(Nobelprize.org)
情報漏れなどのトラブルも後を絶たず
ここ数年は、ノーベル賞関連のトラブルもメディアを賑わすようになりました。例えば、2008年に起きた文学賞受賞者の情報漏れです。今年も、受賞者発表間際になって英国大手のブックメーカー、ラドブロークス社にてトランストロンメル氏のオッズが劇的に下がったことから、再び情報漏れが起きたのではないかと疑われています。文学賞の受賞者選考機関であるスウェーデンアカデミーは現在双方の調査を行っていますが、真相は未だに究明されていません。
また今年は、生理学/医学賞受賞者の一人に選ばれたラルフ・スタインマン氏の死も物議を醸しました。ノーベル賞には、死亡者には受賞資格が与えられないという規則があるからです。しかし、スタインマン氏が亡くなったのが発表わずか3日前だったということと、機関側がその通知を受けたのが受賞発表後だったということで、今回は特別に故人でありながらも認定されることになりました。
私自身、スウェーデンに来てこの2年、テレビでノーベル晩餐会を拝見しています。特に昨年は化学賞に根岸英一氏と鈴木章氏が輝いたということもあって、その様子は鮮明に思い出されます。―― 夜19時の開場とともに、生演奏の中、メインゲストがゆっくりとブルーホールに入ってきます。根岸氏はヴィクトリア王女を、根岸夫人はダニエル王子(ヴィクトリア王女の夫)にエスコートされながらの入場。晩餐中も両組隣席となって会話に花を咲かせていたのを見て、日本人として嬉しかったのを覚えています。
12月10日、ノーベルの日。授賞式は現地時間16時半(日本時間11日0時半、平和賞授賞式は現地時間13時)、晩餐会は19時(11日3時)より始まります。日本からでも授賞式の模様をノーベル賞公式ホームページ(http://www.nobelprize.org//英語)にて中継で、晩餐会も後日同ページで観ることができますので、ご興味のある方は一度ご覧になってみるのも面白いかと思います。
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