2024年5月1日(水)

Wedge REPORT

2009年10月20日

 しかし、選挙を期近にした自民党政権でさえ、麻生総理が世帯当たり年間7万6000円の負担をすべての国民に直接呼びかけたのである。政権交代が行われた今、新たな25%削減を正式な中期目標にするのであれば、前政権時代の中期目標検討委員会で検討された結果である年間1世帯当たり36万円との比較において、新たな分析結果を、その過程とともに示す必要がある。

 実際には、種々の世論調査にあるように、環境問題についての関心は高くとも、多額の負担をしてまでライフスタイルを変更しようという人はそれほど存在していない。年間1世帯当たり36万円の負担という数字は、温暖化対策を妨害する意図をもった宣伝ではなく、このように「温暖化対策のためだからといって、現状のライフスタイルを自主的には変えたくない」という層の人たちに、ある意味強制的にライフスタイルを変革してもらうためには、どの程度経済的な負担を感じなければならないかを弾いた数値なのである。

 温暖化対策のコストは、必ずエネルギーコストの上昇に跳ね返る。エネルギーは生活必需品であり、所得分配や地域格差への影響は逆進的である。新政権には、25%削減構想について、こうした点を含めて国民負担の分析をオープンな過程で行い、かつ外交的な必要性と合理性を説明して、幅広い国民合意を得ることが求められる。

◆「WEDGE」2009年11月号

 

 
 

 

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