2024年12月22日(日)

前向きに読み解く経済の裏側

2019年5月6日

インフレの時代が来る

 労働力不足は、賃金上昇を通じて物価を押し上げます。「これまでは、景気が回復しても物価が上がって来なかったのだから、これからも上がらないだろう」、と考えるのは危険です。

 氷を熱すると、最初は温度が上がりませんが、ある時から急に温度が上がり始めます。氷が融け終わった時点からです。それと似たようなことが、景気と物価の間でも起こると考えられます。

 景気が回復を始めても、失業者がいる間は賃金は上がりません。失業者がいなくなって賃金が上がり始めても、最初のうちは利益を犠牲にして値上げを我慢します。

 しだいに、我慢できなくなって値上げをする会社が出てきます。今回は、宅配便業界が最初でした。業界によって、コスト全体に占める賃金の割合、競争の激しさ、等々が異なるので、宅配便業界の動きが一斉に他業界に広がるわけではありませんが、方向としては広がっていくに違いありません。

 インフレで庶民の生活が苦しくなる可能性は皆無ではありませんが、過度な懸念は不要でしょう。賃金が上がったほどには物価は上がらないからです。賃金以外のコストがそれほど上がらなければ、賃金上昇分を売値に転嫁したとしても、値上げ幅は賃上げ率より低くなるはずですから。

 もっとも、多額の銀行預金を持っている高齢者にとっては、インフレで預金が目減りしてしまうので、老後の生活が厳しくなりかねません。令和時代には、資産の一部をインフレに強い株や外貨で持つようにしたいものですね。

  
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