手塩にかけて育てたパンダの巣立ちを見送るのは、遠藤やチームのメンバーたちにとってどれだけ寂しいことだろうか。想像すると胸が痛くなる。
「初めて中国に送り出した時はやはり寂しかったですが、その後中国を訪れたときに、良浜の最初の子の梅浜が母になって自分の子供を育てているのを見ました。たくさんの子の父になっていた雄浜(ゆうひん)は私が入社した時にはすでに中国に渡っていたのですが、顔を見たらすぐにわかりました。浜系の顔をしてたから。永明に似てスッとした顔立ち。こんなふうに母になったり父になったりして幸せに暮らし、その子供たちが世界の動物園に行っている。命をつないでくれていると実感できました」
パンダ飼育チーム8名のうち、7名が女性。「おはよう、元気?」と声をかけ、「ラウちゃん(良浜)頑張って」と励ます。
願わくば……中国から永明の後継役の若いオスが来てくれたなら、今いるパンダはみんな女の子だから、生まれ育った白浜で子育てができるかもしれない。
「もしここで桜浜、桃浜、結浜、彩浜が子育てしてるのを見られたら、私、きっと泣いちゃうと思う」
この言葉を聞いた時、希少動物の繁殖という使命を負ってジャイアントパンダの飼育にあたる気の休まることのない激務を支えているのは、責任感という言葉を超えた深い深いパンダへの愛なのだと確信した。
阿部吉泰=写真
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