2024年12月5日(木)

さよなら「貧農史観」

2012年1月18日

「日本の農産物は品質が良いから海外で売れる」と思う読者は多いはずだが、現実は違う。
政府は農産物輸出を農政の重要テーマに掲げるが、農水省のやり方は現地で失笑を買っている。
一方、日本よりも小さな面積のオランダが農産物輸出で世界第2位になれたのはなぜか。

 11月初旬、オランダの経済・農業・イノベーション省の招待で同国を訪ねた。筆者はここで、世界から取り残されている日本農業の現実を痛感することになった。

高級品でも売れない理由

 我が国の農業界は、数十年間、世界で最も豊かで大きなマーケットの中にあった。それに安住した結果、日本の農業はおよそ先進国とは思えない“精神の鎖国”のままである。世界と比較しても技術水準が高く、海外マーケットでも十分にビジネスチャンスがあると思える花や野菜、果実なども、輸入品に「怯える」だけで、海外マーケット開拓への熱意が感じられない。

◎農産物輸出ランキング 日本は・・・
九州とほぼ同面積のオランダが790億ドルと世界第2位。一方、日本は21位で、27億ドルと桁違いに少ない。
注:数値は2008年 出所:FAO statistical yearbook 2010
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 農林水産省によれば、2010年の日本の農林水産物輸出の総額は4920億円。農産物だけに限定すれば2865億円に過ぎない。グラフを見れば、日本の農産物輸出の少なさは突出している。

 政府は輸出促進を農政の重要テーマとして掲げるが、実態はあまりにも寂しい。農水省のホームページには「海外の高級店等において、日本産品を取り扱うアンテナショップを設置し、日本産品を販売する場を提供します」とある。09年度に行った事業の例として、アラブ首長国連邦での報告が紹介されている。そこで展示販売されたのは、1玉9600円のメロン、1個3800円の梨、1300円のリンゴ、1900円の柿などだそうだ。

 果たしてこれが日本の農産物のマーケット開発につながる取り組みなのだろうか。筆者は数年前に『農業経営者』の読者とともに、ドバイのホテルや流通業者に販路を求めて営業をしたことがある。その折、ドバイの高級スーパーで日本の農水省から委託を受けたコーナーを担当するマネージャーに話を聞いた。彼は「棚の使用料は貰っているので売れなくても損はない」と笑っていた。 客として来ていた駐在の日本人も、その値段を見て「こんな値段では買えない」と呆れていた。つまり、税金を使って失笑を買っているのが現実なのである。


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