2024年11月24日(日)

さよなら「貧農史観」

2012年1月18日

“精神の鎖国”から脱却を

 そんな中でも世界に目を向ける経営者は日本にもいる。和歌山県農事組合法人興里農場を経営する中村泰明氏(63歳)である。中村氏は10年前からインドネシアのジャカルタから車で約3時間のワルンゴンダン町(チアンジュール県)で3・5ヘクタールのハウスでバラと菊を生産している。標高1200メートルの高地にある中村氏の農場では、赤道直下ゆえ、季節を選ばず花芽が付き、雨季はあっても、温度条件も花栽培に適している。オランダの農場がケニアなどに生産農場を作るのと同じ考え方だ。同氏はインドネシアで生産した花を東京、大阪、名古屋などの市場のほかシンガポールや香港にも出荷を始めている。日本国内でも、その品質で国内品以上の高単価で取引をしている。売り上げは現在2億円弱だが、すでに50ヘクタールの土地を確保し、独自品種の開発も進めている。数年以内に10ヘクタールの規模に拡大し、シンガポール、香港をメインマーケットにしようとしている。中村氏は外国語に堪能だというわけでもない。だが、自らオランダ、イスラエル、スペインなどの農場や農業関連企業を訪ね歩く「行動力」と「経営力」を持っているのである。

 恵まれたマーケットに安住することなく、チャレンジすれば、道は拓けることを中村氏は教えてくれている。“精神の鎖国”からの脱却が今こそ求められている。

[特集] なぜ、TPPに参加すべきか?

◆WEDGE2012年1月号より


 




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