World Energy Watch

2019年8月20日

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環境派トランプを非難するマスメディア

 トランプ大統領に批判的なニューヨークタイムズ紙は、トランプ演説が触れた実績は達成されているが、成果は今までの政権が努力した結果であり主張の大部分は事実に基づいていないとの専門家の意見を紹介している。

 さらに、フロリダ州の商店主に連邦政府が環境対策に真摯に取り組んでいる話をさせたのは、世論調査によると同州の共和党員の環境問題への関心が高く、さらに海面上昇によりマイアミなどが影響をうけるため気候変動問題取り組みの最前線の州になっているのが理由だとの解説も行っている。

 トランプ演説の批判を行っているのは米国のマスメディアだけではない。英国のガーディアン紙は、演説が行われた日の紙面で「トランプの最も危険な環境への攻撃」と題した記事を掲載した。トランプ大統領が気候変動に懐疑的な立場を取っていることに触れ、ニューヨーク州立大学エネルギー・気候変動センターのレポートによるとトランプ政権は健康と環境に関係する法を廃止あるいは緩和していると述べ、次の5つを最も危険として挙げている。

  • パリ協定からの離脱
  • ユタ州の2つの国定記念物、動物保護区を縮小したこと
  • オバマ政権が火力発電所からの二酸化炭素排出削減のため策定したクリーン・パワー・プランを廃止しようとしていること
  • 水源保護を緩和する方向にあること
  • オバマ政権によるメタンガス漏洩防止規制を廃止する予定であること

トランプ大統領が環境への取り組みをアピールした理由は

 マスメディアには評判が悪かったトランプ大統領の演説だが、環境問題への取り組みを初めて持ち出した理由は、2020年の大統領選に関する米国世論の動向をトランプ大統領側近が気にしたためだろう。

 ワシントンポスト紙とABCニュースが6月28日から7月1日にかけ実施した世論調査によると、トランプ大統領の職務遂行に満足が44%(非常に32%、ある程度12%)、不満53%(全く45%、あまり8%)、わからない3%だった。

 各政策に関する意見では、経済:満足51%、不満42%、移民:満足40%、不満57%、外交政策:満足40%、不満55%などだが、大統領の気候変動政策に関する不満の比率が各政策の中で最も高く、満足29%に対し、不満62%だった。18年6月の調査では、気候変動政策に満足34%、不満57%であり、1年間で満足が5%減少し、不満が5%上昇している。

 仮に大統領選が今日行われるとした場合の投票行動を尋ねる設問もあるが、民主党からジョー・バイデン元副大統領が候補になる場合には、トランプ41%、バイデン55%となっている。大統領選投票時に重要と考える政策に関する設問では、気候変動問題を重要とする意見が54%(最も重要な項目の一つ15%、非常に重要40%、注:四捨五入の関係で合計と合わない)、重要でない44%(ある程度重要27%、重要でない17%)となっており、無視できない問題となっている。

後退する自動車の排ガス規制

 環境問題への取り組みへのアピールとは裏腹に、トランプ政権では石炭火力からの排出規制緩和、石炭鉱区の開放など行われているが、トランプ大統領は就任当初からオバマ政権が定めた2025年の自動車の排ガス規制を緩和すると明言していた。8月上旬、環境保護庁と運輸省は排ガス規制案をホワイトハウスに提出したが、オバマ規制との比較では20%以上排出が多くなる2020年基準を据え置く案と言われている。

 トランプ政権は、規制を強化すると自動車価格が上昇し買い替えが促進されず、安全性能に優れた最新車種が普及しないと説明しているが、燃費が向上しないことにより米国内のガソリン消費量が減少しないので、トランプ政権支持のエネルギー業界にはプラスになるとの見方もある。

 連邦政府の動きに先立つ7月下旬、カリフォルニア州政府とフォード、ホンダ、フォルクスワーゲン、BMWの4社が2026年の排ガス規制の自主目標に合意したと報道された。ワシントンポストによるとトランプ政権の規制値案1ガロン当たり約37マイルに対し、約50マイルで合意したとされている。自動車メーカが厳しい規制値に合意した理由は、将来の規制値が不透明な状況を避けるためと言われている。

 連邦政府とカリフォルニア州など13州は自動車の排ガス規制値に関し対立しており、まだ紆余曲折がありそうだが、米国の二酸化炭素排出量の約30%を占める自動車部門からの排出削減にも温暖化問題にもトランプ政権は関心が薄いようだ。貿易問題で対立が続く中国との協力関係にはトランプ政権の関心はさらにない。

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