2024年12月22日(日)

WEDGE REPORT

2019年4月18日

(tupungato/Gettyimages)

 総合商社で海外事業に携わる部署にいると海外出張が日常の風景になる。ちょっと大きな荷物を持って職場に来た同僚は、夜便でシドニー出張、その隣の席の社員は今インドネシアにいるらしい、というように海外出張は特別なことではない。

 私も商社時代に多いときは1年間に20回以上海外出張していた。ジャカルタから夜行便で帰ってきて、翌日からニューヨークとか、アメリカからアフリカを経由して世界一周とか普通ではないような出張をしていた。

 計算すると1年のうち、2週間から3週間を国際線の機内で過ごす生活を続けていたことになる。大学の教員になってからは年に数回の海外出張になったが、エネルギー・環境政策が専門なので、まわりのエネルギー・環境に携わる企業の人たちは相変わらず毎月のように、会議とか打ち合わせに出張している。海外に行った回数を数えていないが400回から500回、行った国は40カ国以上だが、仕事の関係で一番出張した国は米国だ。米国には3年間住んだこともある。

 国際線と海外で国内線に搭乗した回数は数千回だ。加えて、プライベート・ジェットに便乗させてもらったり、ヘリコプターに乗ったこともある。それだけ航空機に乗ると様々な経験をする。

 例えば、乗客が少ないとの理由でフライトがキャンセルされたことがある。天候悪化を理由にフライトが予定時刻より早く飛び立ち、乗れなかったこともある。国際線フライトでタレントに会ったこともかなりある。成田からニューヨークに向け飛び立った直後に急病人で引き返したこともあるが、搭載している食事を廃棄することになるのがもったいないと言われ、海上で旋回し燃料を投棄している短時間に食事をした。そんな経験の中には、お役に立ちそうな話がありそうだ。まず、飛行機に乗って、お金が儲かる話からしたい。

飛行機に乗ってお金を稼ぐ

 飛行機に乗って稼げることもある。どうやって? 最近は、日本のフライトでも時々あるようだが、米国の国内線ではオーバーセールス(オーバーブッキング)、要は座席数以上に予約を取ってしまうことが、結構起こっている。

 変更可能なチケットを持っているビジネス客などは予約のフライトに乗らないことがあるから、空席を作らないため航空会社は必要悪としてオーバーセールスを行っている。どれくらいか? 2016年、米国では4万人以上の乗客が予定していたフライトから降ろされている。

 米国では法により航空会社は先ず自発的に降りる(Voluntary Bumping)乗客を募ることが義務付けられている。どうやって? それは航空会社に任されているが、先ず、次のフライトのシート、それから無料航空券、通常これで席を放棄する人はいないので、そこから現金が加算されていく。

 ただ、最終便だと、なかなか降りる人はいない。私が出くわした最終便のケースでは、翌日の朝一番のフライト確約、無料航空券、ホテル、加算金は最終的に1000ドルまで上がり、やっと降りる人が見つかった。

 自発的に降りる人を募るのは、普通は全員が搭乗した後だ。機内アナウンスで募集が始まり、条件が段々上がっていく。夏休み時期、東海岸からサンフランシスコに行くフライトで11名もの募集があったことがある。募集が始まり次のフライトの席と無料航空券の段階で数十名が立ち上がったので驚いた。普通はなかなか降りる人は名乗り出ないのだが、夏休みでサンフランシスコに遊びに行く人が多く、無料航空券と数時間の遅延を秤にかけ、航空券に魅力を感じた乗客が多くいたということだ。航空会社の職員が11名を超えた希望者を押し戻すのに苦労していた。

 もし、自発的に降りる人がいなかったらどうなるのか。航空会社は乗客を降ろすことが法律上可能だ。時にはトラブルになる。2年ほど前、シカゴからケンタッキー州ルイビルまでの最終便で発生したトラブルを多くのマスメディアが報じ、航空会社が謝罪することになった。1時間ほどのフライトだが、4名の乗客を降ろす必要が生じた。航空会社は現金を最初400ドル提示したが、最終便なので誰も応じなかった。800ドルにしたが、やはり誰も応じない。

 ここで、航空会社は自発的に募るのを止め強制的に4名の乗客を降ろすことを決めたが、4人目のベトナム系米国人医師が翌日の診療があるとして拒否し、力づくで降ろす時に彼にけがをさせてしまった。

 この事件後、米国ではオーバーセールスを行うフライトが大幅に減少しているが、ユナイテッド航空は、補償上限額を法で定められた1350ドルを大幅に上回る1万ドルに設定し、1万ドルの旅行券を得た乗客もでた。

 こういう事情を知らない日本人乗客は、航空会社に騙されることもある。日本から出張中の4名が米国内で移動した時に、到着が遅れたことがあった。事情を聞くと、予約したフライトがオーバーセールスのため搭乗を断られ、なぜ4人が選択されたのかの説明も補償もなかったという。本来であれば、自発的に降りる乗客を募らなければならないが、事情を知らない日本人乗客を手っ取り早く次のフライトに回すことにしたのだろう。

 航空会社に騙されてはいけない。予約していた便に乗れないと言われたら、どうしても乗る必要があるから、自発的に降りる客を募ってくれと主張しないと損をする。自発的に席を譲る時は補償の交渉だ。

 まず、次のフライトの席の確約、空港内で使用できる食事券、無料航空券、ラウンジの利用、現金、最終便であればホテルを要求することだ。どこまで獲得できるかは、あなたの腕次第。そのためには英語の勉強が必要だが。英語の勉強法については、またどこかでお話したい。

 もし、大きな補償が得られなくても、法では機体の変更により搭乗客数が減少したなどの原因を除き、搭乗予定客がオーバーセールスにより予約したフライトに乗れなかった場合には、到着が遅れる時間に応じ最高1350ドルまでの補償を行うことが航空会社には義務付けられている。国内線の場合1時間以上の遅れでチケット額の2倍(上限675ドル)、2時間以上の遅れで4倍(上限額1350ドル)だ。


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