今回のテーマは、「米民主党候補の集会とトランプ集会はどこがどう違うのか」です。米民主党大統領指名争いを戦っているカマラ・ハリス上院議員(西部カリフォルニア州)は8月3日、西部ネバダ州ヘンダーソンにある小学校で有権者を集めて対話形式のタウンホール・ミーティングを開催しました。ヘンダーソンはラスベガスから南東に車で約20分の位置にあり、退職をした多くの高齢者が住んでいる地域です。
本稿では、まずハリス上院議員の集会とトランプ集会を比較します。次に、そこから見えてきた同上院議員の問題点とトランプ大統領のアドバンテージについて述べます。そのうえで、同大統領の「ウイニング・ストラティジー(勝利を収める戦略)」について説明します。
ハリスの支持率
ハリス上院議員に関しては、これまでに『「人種カード」の応酬で分断が進んだアメリカ社会』などで紹介をしてきました。ハリス氏は54歳で、カリフォルニア州において初の女性でしかも非白人の司法長官を務めました。
保守系の米FOXニュースが8月16日に発表した世論調査を見ますと、米民主党大統領候補指名争いにおける各候補の支持率は、ジョー・バイデン前副大統領が31%、エリザべス・ウォーレン上院議員(東部マサチューセッツ州)が20%、バーニー・サンダース上院議員(東部バーモント州)が10%、次いでハリス上院議員が8%になっています。他の候補は支持率が5%以下です。米政治メディア専門の「ポリティコ」などによる世論調査においても、ハリス氏は4位につけています。
ハリス上院議員は1回目の民主党大統領候補テレビ討論会で、首位を走るバイデン前副大統領を追い込み、最高のパフォーマンスを見せました。2回目の討論会においては、やや精彩に欠けましたが、依然として注目を浴びている候補の一人であることは確かです。
有権者の声
タウンホール・ミーティングの会場に開始1時間前に到着すると、約30人の有権者が並んでいました。会場は約200名の有権者で埋まり満席になりました。
しかしトランプ集会であれば、同大統領の演説開始1時間前に会場に着いても、入場することはできません。徹夜組を含めて約2万人が会場となるアリーナに押しかけるからです。トランプ集会は、ハリス氏を含め他の民主党候補の集会とは、規模がまったく異なります。
タウンホール・ミーティングに参加した白人男性のダンさん(38)は、ハリス上院議員について次のように語りました。
「ハリスかピート(ブディジェッジインディアナ州サウスベンド市長)に投票します。おそらくハリスになると思います。バイデンは過去の人です。ハリスはオバマ(前大統領)のように有権者を鼓舞できます。彼女は強いメッセージも発信します」
ダンさんはトランプ大統領に関してもコメントをくれました。
「トランプは絶対に人種差別者です。彼は金正恩と人間関係を作りました。金は独裁者で非人道的です。彼と関係を築くのは決して良いことではありません」
ダンさんと同じくトランプ大統領を人種差別者と断じた白人の親子は、ハリス上院議員、ウォーレン上院議員ないしブディジェッジ市長のいずれかに投票すると回答し、決めかねていました。会場で筆者の隣席に座った白人男性(71)は、トランプ大統領と同じペンシルべニア大学を卒業しました。この男性も誰に投票するのか決めかねていました。
「トランプを破ることができるのかを、私は投票基準の第一に挙げます。トランプは人々に敬意を払っていません」
彼はこう述べて、トランプ大統領に勝てる可能性の高い民主党候補に投票するという意思を示しました。
結局、筆者が現地ヒアリング調査を実施したハリス氏のタウンホール・ミーティングに参加した有権者は、民主党大統領候補指名争いにおいて誰に投票をするのか決めかねていました。一方、トランプ集会に参加する支持者は熱狂的で、すでに同大統領に投票することを決めています。