今回のテーマは、「トランプのハリス攻略法」です。『若手台頭の米民主党に、ほくそ笑むトランプ』では、民主党大統領候補指名争いで注目を浴びているカマラ・ハリス上院議員(米西部カリフォルニア州)のアドバンテージ及び1回目のテレビ討論会で見せた同議員の「奇襲攻撃」について分析しました。
本稿では、仮にハリス上院議員が民主党の本命になった場合、ドナルド・トランプ米大統領がどのような「ハリス攻略法」を選択するのかに関して解説をします。そのうで、ハリス氏の課題について述べます。
極右からの攻撃
オルト・ライト(極右)のコメンテーターで有名なアリ・アレキサンダー氏がハリス上院議員について、「彼女はジャマイカの奴隷所有者の血統である。アメリカの黒人ではない」と自身のツイッターに投稿しました。ハリス上院議員はアフリカ大陸から中間航路(黒人奴隷を運んだアフリカから新大陸の航路)を経て、貿易された奴隷の血統ではないといいたいのです。同氏は「(ハリス上院議員は)本当の黒人ではない」というメッセージを発しています。
これに対して、ハリス上院議員は「私は黒人だ。黒人であることに誇りをもっている」と反論しています。一般に米国人から見れば、ハリス氏は黒人です。そして黒人として扱われてきたはずです。しかし、アレキサンダー氏は大統領選挙を前に「本当の黒人か否か」の議論を展開して、ハリス氏にダメージを与える戦略に出ました。
アレキサンダー氏の狙いは、ハリス氏を支持するアフリカ系の有権者に懐疑心を持たせ、同系の票を減らすことです。
トランプ陣営の「人種カード」と陰謀論?
うえのアレキサンダー氏の書き込みを見た長男のドナルド・トランプ・ジュニア氏は、「それは本当か? すげえ!」と自身のツイッターに投稿しました。
その後、米メディアがこのつぶやきを取り上げると、ジュニア氏は即座に削除しました。仮にハリス氏が民主党から大統領候補ないし副大統領候補の指名を受けた場合、トランプ陣営は「人種カード」を切ってくる可能性が高いといえます。
米メディアによれば、ネット上でハリス上院議員に関して「両親が外国で生まれたので、大統領選挙に出馬する資格はない」という誤情報がすでに拡散しています。
以前、トランプ大統領は「オバマ(前大統領)は米国ではなくアフリカで生まれた」という事実とはまったく異なる主張をして、「出生地」を利用した陰謀論を展開しました。「オバマは大統領になる資格がない」というメッセージを発信して、有権者を混乱させる思惑があったことは確かです。
もしハリス上院議員がライバルになった場合、トランプ大統領が同議員に対しても出生地及び人種を利用した陰謀論を使う可能性は否定できません。