2024年12月23日(月)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2019年7月10日

 今回のテーマは、「ハリスの奇襲攻撃」です。『トランプと戦うのは誰だ? 早くも始まった20年米大統領選』で紹介したカマラ・ハリス上院議員(民主党・米西部カリフォルニア州)が、6月27日に行われた1回目の米民主党候補者テレビ討論会において、支持率で首位を走るジョー・バイデン前副大統領にダメージを与え、最高のパフォーマンスを見せました。  

サンダース氏とバイデン氏をやりこめるハリス氏(AP/AFLO)

 その結果、討論会後の米CNNの世論調査(19年6月28-30日実施)によると、ハリス氏は17%の支持率を得て2位に浮上しました。一方、首位のバイデン氏は10ポイント落とし、支持率が22%になりました。

 米ワシントン・ポスト紙及びABCニュースによる共同世論調査(同年6月28-7月1日実施)では、バイデン前副大統領の支持率は29%で、11%のハリス上院議員を18ポイント上回っています。ただ、今回の討論会に関して民主党支持者の41%がハリス上院議員、21%がバイデン氏のパフォーマンスを評価しており、同上院議員に軍配が上がりました。

 本稿では、ハリス上院議員のバックグランドに基づいたアドバンテージについて解説したうえで、同上院議員がテレビ討論会でバイデン前副大統領に仕掛けた戦略を分析します。

ハリスの「異文化連合軍」

 ハリス上院議員は1964年10月20日に、カリフォルニア州バークレーで生まれました。現在54歳です。父親はジャマイカ出身の経済学者で、母親はインド出身のガンの研究者です。両親はカリフォルニア大学バークレー校で出会いました。

 しかしハリス上院議員が7歳のとき、両親は離婚をします。12歳になるとマギル大学で職を得た母親に連れられてカナダのモントリオールに移り、ハリス氏はそこで高校生活を送りました。その後米国に戻り、ハワード大学(ワシントンDC)で学士号を取得し、UCヘイスティングス・カレッジ・オブ・ザ・ロー・(サンフランシスコ)で法律を学んでいます。

 女性初のカリフォルニア州検事総長(11-16年)を務めたハリス氏は、16年の上院選で当選しました。現在1期目です。

 ちなみに、白人の夫ダグラス・エムホム氏も54歳です。エムホム氏は、ハリス氏よりも7日早い10月13日に生まれています。同氏は弁護士で、子供が2人おり、14年にハリス氏と再婚しました。

 ハリス陣営は同上院議員が持つ文化的多様性のバックグランドを利用して、女性、アフリカ系、ヒスパニック系及びアジア系から構成された「異文化連合軍」を構成できます。ドナルド・トランプ米大統領を支持する白人労働者、退役軍人、キリスト教右派並びに白人至上主義者から成る「単一文化連合軍」に対抗できます。

 さらに、「法を守るハリス」対「法を犯すトランプ」、「捕まえるハリス」対「逃げるトランプ」といった対立構図を作ることも可能です。ハリス氏は早くも大統領の職に就いたら、トランプ大統領を起訴すると有権者に約束し、反トランプの感情が強い非白人及び女性に訴えています。

 米ギャラップ社の世論調査(19年6月3-16日実施)によれば、全体で45%がトランプ大統領弾劾を支持していますが、女性では52%、非白人では64%が賛成しており、7ポイントから19ポイントも全体の数字をリードしています。この数字は「トランプ弾劾」強硬派で非白人と女性の支持を得ているハリス氏にとって好都合であり、同氏は調査結果を把握して選挙活動を行っているフシがあります。


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