2024年11月22日(金)

海野素央の Democracy, Unity And Human Rights

2019年7月10日

バイデンにとってどこがダメージなのか?

 ハリス上院議員はテレビ討論会で、自身の辛い経験と争点を結びつけてバイデン前副大統領を激しく非難しました。バイデン氏が1970年代に人種差別撤廃のための「強制バス通学」の制度に反対したと指摘し、攻撃を仕掛けたのです。

 米国では公立学校内の人種の融合を図るために、黒人並びにヒスパニック系(中南米系)の生徒は、白人が多い公立学校に強制的に学区を超えて通学をさせられました。米メディアによれば、ハリス上院議員が生まれ育ったバークレーでは白人の生徒も黒人の多い公立学校への越境通学を強いられました。

 討論会でハリス上院議員は、バイデン氏に体を向け直視してこう述べました。

 「あなたが人種分離によって名声を得て出世をした2人の上院議員を称賛するのを聞いて傷つきました」

 2人の上院議員とは公民権保護及び人種の融合に反対した人種分離主義者ジェームズ・イーストランド氏(民主党・米南部ミシシッピー州)とハーマン・タルマッジ氏(民主党・米南部ジョージア州)の元議員を指しています。

 バイデン氏は一旦ハリス上院議員とアイコンタクトをとりましたが、即座に正面を向き聞き入っていました。

 ハリス氏のバイデン氏に対する挑戦は続きます。

 「公立学校の人種の融合を図るために、2級市民の女子生徒が毎日バス通学をしました。その女子生徒は私です」

 バイデン前副大統領は防戦に回りました。バイデン氏に対するダメージは小さくないと言わざるを得ません。というのはハリス氏の議論によって、バイデン氏の大統領選挙出馬表明の理由が完全に揺らいでしまったからです。

 そもそもバイデン前副大統領は出馬表明のビデオで、出馬理由を1点に絞りました。トランプ大統領の人種差別的な言動です。

 バイデン前副大統領は南部バージニア州シャーロッツビルで17年8月に起きた白人至上主義者と反対派の衝突を取りあげました。この衝突で反対派に死者が出ています。

 バイデン前副大統領はトランプ大統領が白人至上主義者を明確に非難せずに「喧嘩両成敗」の立場をとったのは、米国の価値観に反すると強く非難しました。バイデン氏は同大統領が人種差別意識を持っているというメッセージを有権者に発信したのです。

 ところが今回のハリス上院議員の指摘は、実はバイデン氏も過去に人種差別的な言動をとっていたという印象を有権者に与えました。そこがダメージです。


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