海野素央の Love Trumps Hate

2019年7月10日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授 心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08年~10年、12年~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年と12年米大統領選挙で研究の一環として日本人で初めてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。激戦州南部バージニア州などで4200軒の戸別訪問を実施。10年、14年及び18年中間選挙において米下院外交委員会に所属するコノリー議員の選挙運動に加わる。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。中西部オハイオ州、ミシガン州並びに東部ペンシルべニア州など11州で3300軒の戸別訪問を行う。20年民主党大統領候補指名争いではバイデン・サンダース両陣営で戸別訪問を実施。南部サウスカロライナ州などで黒人の多い地域を回る。著書に「オバマ再選の内幕」(同友館)など多数。

「世代交代」のメッセージ

 加えて、バイデン前副大統領とハリス上院議員の討論を通じて、両氏の世代間ギャップも顕著になりました。当時、ハリス氏は越境してバス通学をする小学生で、一方バイデン氏はすでに政治家でした。

 民主党支持者に中には40代ないし50代の大統領候補を理想とみる者が少なくありません。ハリス上院議員は「世代交代」も同時に訴えることができたワケです。

 結局、バイデン氏はハリス氏の「奇襲攻撃」に効果的に対応できませんでした。仮に、「1970年代の米国社会の分断よりも、トランプによる分断の方がはるかに深刻だ」と切り返していれば、「成熟したバイデン」対「未熟なハリス」という構図を描けたはずです。しかし、バイデン氏はこの機会を逸しました。

トランプのメリット

 バイデン前副大統領は7月6日、南部サウスカロライナ州で、1970年代に人種分離主義者の上院議員と協力した点について「後悔している」と述べ、謝罪しました。前で紹介したテレビ討論会後に実施された米ワシントン・ポスト紙とABCニュースによる共同世論調査では、黒人有権者からバイデン氏は42%の支持を得ており、ハリス氏の11%を31ポイントも上回っています。しかし、バイデン氏には人種分離主義者との協力及び通学バスの論争が続けば、支持率低下に歯止めがかからなくなるので、早く終止符を打ちたいという思惑があったのでしょう。

 1回目のテレビ討論会は、ハリス陣営に加えてドナルド・トランプ米大統領にもメリットがありました。トランプ大統領はハリス氏の議論の仕方から「バイデン攻略法」を得たことは看過できません。仮にバイデン前副大統領が民主党の大統領候補に指名され、共和・民主両党の大統領候補によるテレビ討論会で人種問題に関して攻撃を仕掛けてきても、トランプ大統領は反撃できるという自信を得たことは間違いありません。

  
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