世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年9月30日

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 9月8日に行われたロシアの地方選挙の結果に関して、日本の新聞やテレビでは、統一ロシアが地方選で圧勝という報道をした。しかし、9月9日付の英エコノミスト誌の論説を読むと、日本の報道とは随分違う視点から今回の選挙結果を見ている。すなわち、与党統一ロシアはモスクワで敗北したという見方である。モスクワ市議会選挙の結果を見ると、定数45のうち、統一ロシアは25議席を確保した。過半数を確保したので勝利であるというのが日本のマス・メディアの分析であるが、エコノミスト誌は、選挙前40席あった議席を25席まで減らしたので、これは統一ロシアの敗北であるとする。 

Sviatlana Lazarenka/Madmaxer/iStock Editorial / Getty Images Plus

 同じ数字をどう捉えるかであるが、どちらかと言うと、日本の報道よりも、エコノミスト誌の論説の見方が、より的を射ているのではないかと考える。要するに、プーチンの与党統一ロシアに対する逆風が吹いていることを、今回の選挙結果は示している。 

 第1に、モスクワの選挙結果についての評価であるが、統一ロシアが手痛い敗北を喫したことは間違いがない。伸びたのは共産党(5から13議席)、公正ロシア(3議席)などプーチン政権の準与党であると言うが、これはナワリヌイのいわゆる「スマート」投票(注:統一ロシアを敗北させる位置にある候補であれば、まやかしの野党候補であってもその人に投票すること)の戦術の結果である。本当の反対派が立候補を阻止される中で、反政府派については、それ以外の方策はなかったと思われる。 

 モスクワは首都である。ロシアにおいては、首都で最初の変化が出てくるところがあり、ソ連崩壊につながった変化もモスクワでの抗議デモから始まった。モスクワとサンクト・ペテルブルグの動向がロシア全体の動向に与える影響は大きい。 

 第2に、統一ロシアは地方の首長選で善戦したのはその通りであるが、それは部分的には統一ロシアの看板を隠し、無所属で立候補することで達成された。16の知事のうち、6人が無所属として立候補した。 

 知事選に関しては、ロシアではプーチンに知事解任権があり、不人気な知事は任期中にもプーチンが解任し、新しい知事に変えられうるということに着目する必要もある。 

 統一ロシアの人気度とプーチンの人気度が全く同じように動くとは思われないが、石油価格の低迷による財政難、軍事費の負担、経済制裁などで、年金支給年齢引き上げを余儀なくされ、かつ腐敗のうわさが絶えない中、プーチンの人気も下がり気味になることは当然であろう。 

 ロシア経済は、今は韓国の規模に近づいている。かつては、極東ロシアに中国人が大挙して出稼ぎに来たが、今やロシア人が中国に出稼ぎに行くと聞く。情勢は驚くほどに変化する。

  
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