海野素央の Love Trumps Hate

2019年9月27日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「トランプの『ウクライナ疑惑』とイラン問題」です。ドナルド・トランプ米大統領に新たな疑惑が浮上しました。「ウクライナ疑惑」です。そこで本稿では、この疑惑がどのように来年の米大統領選挙及びイラン問題に影響を与えるのかについて述べます。

ワシントンの議事堂前でトランプ大統領の弾劾を訴える市民(AP/AFLO)

安全保障と大統領選挙協力の「取引」?

 複数の米メディアによると、トランプ大統領は7月25日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話会談を行った際、軍事支援と引き換えに2020年米大統領選挙でライバルになる可能性の高いジョー・バイデン前副大統領と、次男ハンター氏に対する汚職捜査を再開するように「圧力」をかけました。これが「ウクライナ疑惑」です。

 同疑惑は米情報機関の内部告発により発覚しました。同時通訳及び情報機関が、トランプ大統領と各国首脳の電話会談を聞いているからです。

 仮に上の報道が真実であれば、再選を狙うトランプ大統領は外国政府に対して、軍事支援を取引材料にして大統領選挙の協力を引き出そうとしたことになります。つまり、政敵のバイデン氏を倒して来年の米大統領選挙において勝利を収めたいという個人的な目的を果たすために、安全保障を利用したわけです。

 実際、トランプ大統領は米議会で承認されたウクライナへの軍事支援を保留していました。軍事支援を選挙協力への「見返り」として使うつもりだったのでしょう。

 いずれにしても、トランプ大統領が「圧力」をかけて安全保障と大統領選挙協力の「取引」を外国政府に対して行ったのか否かが争点になります。

標的はバイデン親子

 国連総会に出席しているトランプ大統領は「(ゼレンスキー大統領に)圧力を一切かけていない」と主張し、疑惑を全面的に否定しました。さらに、記者団に対して「バイデンの息子はウクライナと中国からいくらお金をもらったのか」と問いかけました。そのうえで、「ジョー・バイデンと息子は腐敗しているが、フェイク(偽)ニュースはそのことを報じない。彼らは民主党支持者だからだ」と語気を強めて語りました。

 トランプ大統領は、オバマ政権時代にウクライナ政策に関与したバイデン前副大統領が、ハンター氏を捜査していたウクライナの検事総長を解任するように同国の政府に「圧力」をかけたというのです。しかし、一部の米メディアはこの検事総長は同氏を捜査していなかったと報道しています。 

 加えて米メディアは、ハンター氏はウクライナのガス会社「ブリスマ」の取締役として月に5万ドル(約538万円)の報酬を得ていたと報じています。トランプ大統領はこの件に関して、「彼(ハンター氏)はエネルギー(産業)について知識がないのに高額の報酬を得た」と指摘しています。

 バイデン氏は5月18日、東部ペンシルバニア州フィラデルフィアで支持者を集めて集会を開き、2020年米大統領選挙への出馬宣言を行いました。筆者はその集会に参加しましたが、登壇したバイデン氏一族の中にハンター氏の姿はありませんでした。

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