海野素央の Love Trumps Hate

2019年9月27日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

トランプの「ジレンマ」

 トランプ大統領は国連総会での一般討論演説の中で、サウジアラビアの石油施設攻撃に関与したとみられているイランについて、「全ての国は行動する義務がある」「責任ある政府はイランの血への欲望を支援するべきではない」と強調しました。同国を孤立させる狙いがあったことは明らかです。

 ただトランプ大統領の関心事は、イラン問題よりも別のところにあったのも事実です。これまでの一般討論演説と比較すると、ジェスチャーや熱意に欠けた演説でした。

 トランプ大統領は国連総会に出席中、連日複数回にわたり、自身のツイッターに「ウクライナ疑惑」並びに「弾劾調査」に反論する投稿をしています。疑惑と捜査の双方の対策に追われていたのでしょう。

 さて、「ウクライナ疑惑」と「弾劾調査」に対する米国民の注目度が高まったとき、トランプ大統領は彼らの関心をそらそうと、イランに対する軍事攻撃を行うのでしょうか。

 トランプ集会で支持者を対象にイラン問題に関してヒアリング調査を実施すると、彼らは戦争に否定的です。2016年米大統領選挙でトランプ大統領は、海外にいる米兵を帰国させることを約束しましたが、その公約をまだ果たしていません。 

 従って、米国民の目を「ウクライナ疑惑」と「弾劾捜査」からそらすために、イランに対する軍事攻撃を仕掛ければ支持基盤を失う可能性が出てきます。

 今年6月にイランが米軍の無人偵察機を撃墜したとき、トランプ大統領は一旦イランに対する軍事攻撃を承認しましたが、直前になって撤回しました。この撤回について、民主党議員のみならず、身内の共和党重鎮リンゼー・グラム上院議員(南部サウスカロライナ州)からも、イラン政権から「弱さ」と見られると指摘されました。これに対してトランプ大統領は、「強い人間は抑制ができる」と反論しています。

 「弱いリーダーとして見られたくない」「米国民の関心をウクライナ疑惑と弾劾捜査からそらしたい」「支持基盤を維持したい」という欲求が極めて強いトランプ大統領は、これからジレンマを抱えることになるでしょう。

  
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