2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2012年3月21日

プーチンに祝意を述べた国々

 フランス、ドイツは欧州諸国の中でもロシアとの関係が深く、今回も早期に首脳がプーチン氏に個人的祝福のメッセージを伝えた。英国のキャメロン首相はプーチン氏に電話をかけたが、当選への祝意を伝えたのではなく、次期リーダーとの協調への意欲を示したという。ただ、ロシアの首相府ウェブサイトは、首脳がプーチン氏に祝意を伝えた国として、旧ソ連の7カ国に加え、日本、ヨルダン、アフガニスタン、ドイツ、英国、ベネズエラ、中国を例示した。米国のオバマ大統領は、数日後に祝意を伝えた。米露関係は険悪な状態に陥ったあと、「リセット」と呼ばれる関係改善を経たが、NATOのミサイル防衛システム欧州配備をめぐる立場の相違が再び深刻化している。英露関係は、ロンドンでのリトヴィネンコ氏殺害事件の容疑者の引き渡しを英国がロシアに求めるなど、政治上の問題を抱え続けている。

「強硬な民主主義売り込みは避けるべき」

 英国世論は、大統領に復帰するプーチン氏とビジネスをすることは従来通り必要なこととしつつ、ロシアの政治参加や法の統治についても何らかをすべきと考えているようである。3月5日のFT紙の社説は、下院選挙をきっかけに広がった抗議行動の背景は経済的不満ではなく、腐敗や法的保護の不足などであると指摘している。次期大統領がこれらの問題に真剣に取り組むのが最善だが、より可能性が高いのは労働者や年金生活者に利益を与えて人気を得る「ばらまき」策であり、これは財政を危うくするという。興味深いことに、FT紙は提言として、マグニツキー弁護士不審死事件を追及するなどしてロシアに責任ある国家への進歩を促す一方、強硬な「民主主義売り込み」を行ってプーチン政権が反西側レトリックを使うようなことは避けるべきだと述べている。

 3月10日(土)に大統領選挙での不正に抗議するデモが行われ、これも英国で報道された。ただしBBCは、12月の10万人に比べて、3月10日のデモ参加者が1万人ないし2万人という数に減少したと報じた。一般に、3月4日や3月10日の予想の範囲内の出来事よりは、12月から2月までの思いがけない展開に対する注目が高かったと思われる。政治参加を求める行動は、少数の「リベラル派」政治活動家のみならず、都市部中間層の多数が参加するまでに広がり、庶民層もいくらかは共感を示すようになったのである。それが将来のロシアの主流になるのならば、プーチン政権周辺の人々とつきあうことだけが、ロシアとのつきあいとは言えなくなる。

「民」の動きに注目と関与を

 これまでは、外国政府がロシアの民主派と関係を深めることは、ロシア当局の反発や民間団体取り締まりを招くというリスクを伴い、最近の選挙前後にもそのような現象は見られた。ただしこれからは、ロシアの民間の声を無視して当局とだけつきあうことは、近い将来のロシアとの結びつきを損なってしまうことになるかもしれない。ロシアと良い関係を築くことで何かを達成しようとするのであれば、ロシアの幅広い層にとって日本が重要で不可欠なパートナーと認識されていくのが望ましい。また、立場が揺らいだ政治リーダーが米国や日本を槍玉に挙げて求心力を高めようとしたことがあるので、今後そのようなことが起こっても深刻にならない程度にはロシア世論が我々を理解していると有益である。

 政権への抗議行動は引き続いているが、国民全体としてプーチン氏を完全に拒否するという流れにはなっておらず、表面的には運動は勢いを失い、プーチン政権は従来同様の統治能力を得るだろう。しかしロシアは産業構造、財政、法の統治などに問題を抱えており、何かきっかけがあれば政権への不満表明が中間層から起こって庶民層に広がるかもしれないし、過激な行動を指向するグループも現れるかもしれない。現状の政権の動向のみならず、将来を見すえてロ シアに注目し関わっていく必要がますます高まったといえよう。


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