ウォールストリート・ジャーナル3月9日付で、ASEAN議会ミャンマー・コーカス議長でインドネシア議会議員のEva Kusuma Sundariが、ミャンマー政府と少数民族との和平交渉に第3者を仲介者として入れるべきだ、と論じています。
すなわち、ミャンマーの改革は進展しているが、政府と少数民族との数十年にわたる不信を乗り越えないと、平和的な民主主義への移行はあり得ないので、国連やASEANなどがこうした交渉の仲介役を果たすべきだ。
これまでに政府は多くの少数民族と停戦などの合意を結んだが、カチン族との戦闘は続いているし、停戦に合意した少数民族も不満が解消されたわけではない。多くの少数民族は2008年憲法の正統性を認めておらず、アウンサン将軍と少数民族集団との間で締結された1947年のパンロン合意――連邦制の下に少数民族地域に一定の自治権を保証している――と1948年の連邦憲法を、政府と少数民族との関係の基盤とするよう主張している。
この交渉を成功させるには、ASEANか国連のお墨付きを得たEU、米、ASEANのチーム、あるいはインドネシアが仲介役になって、交渉の中立性と正統性を保障すべきだ。ミャンマー政府がこれに同意すれば、その真摯さを示すことになるし、少数民族側にとっても利益になるだろう。
ミャンマーは今、歴史の曲がり角にある。その将来のために平和が必要であり、関係者は第三者仲介を通じてそのための努力をすべきだ、と言っています。
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テイン・セイン政権による政治改革は真摯なものであると思われます。ミャンマーがそれなりに民主化し、西側も対ミャンマー制裁を解除できるようになれば、この地域に地政的なよい変化がもたらされることになります。
こうした変革の動きを止めてしまう可能性があるのが、政府と少数民族との争い、特に軍事衝突の拡大なので、政府と少数民族の和平交渉は極めて重要です。
ミャンマー軍事政権は、1995年頃までに、ほぼすべての少数民族との間で停戦合意に達し、新憲法に関する審議に少数民族も参加させましたが、少数民族側は、パンロン合意のような自治権を憲法に盛り込むよう要求、これを軍政側が全面的に拒否した結果、2008年憲法の採択前後から、政府と少数民族の関係が悪化してしまいました。
この問題の解決には憲法の改正が必要になるように思われます。しかし、軍の内部では連邦制はまだタブーであり、ミャンマーの国家体制とパンロン合意(少数民族に国家離脱権を認めている)との間でどのような妥協がありうるのか、難しい問題です。
いずれにしても、この少数民族問題がミャンマーの今後に持つ意味をスンダリが指摘したのは時宜を得ており、第三者が仲介の役割を果たすべきだという提言も傾聴に値します。
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