2024年4月24日(水)

WEDGE REPORT

2019年11月28日

 ロヒンギャは国連機関によるインフラ設備、防災工事、NGOの手伝いに従事するケースもあるが、競争率が高いために現地住民が営む農業や漁業などに従事することが多い。本来ロヒンギャは就労が許可されていないため、雇い主も安い賃金でロヒンギャを雇うことが出来る。結果として今まで働いていた地元の人が仕事にありつけなくなってしまう事態が起こっている。

 地元住民にとっては、働き口が減少して収入は減少した中で、急激に増えた人口による需要の高まりで物価が高騰して暮らしを逼迫させている。20代の男性は「大学を卒業してからずっと仕事が無い。雇い主やNGOは地元の人間よりロヒンギャを雇用したがる。地元の人間には支援は無いのに、ロヒンギャは援助物資をそのまま転売している。政府はロヒンギャをきちんとコントロールしなければならない」と怒りを露わにする。

あらたに流入したロヒンギャ難民が食料の配給を受け取るために並ぶ。地元住民には配給がないため、不公平感が募る

関係性もこじれ、事件も頻発

 キャンプ内ではヤバという錠剤で使用されるミャンマー産の覚醒剤が蔓延している。2年前の大流出以降、国境警備の取り締まりが厳しくなり、犯罪組織がロヒンギャ難民を運び屋として利用しているためだ。そのためロヒンギャが密売人や運び屋として逮捕されたり、治安当局によって射殺されたりする事件も数多く報告されている。少女が運び屋として逮捕されたケースもあった。地元の若者がキャンプへ行ってロヒンギャとの関わりによってドラッグに手を染めるのでないかと大人たちは心配する。

 今年の8月22日には与党青年組織の地域代表が何者かに殺害される事件が起こった。地元警察は容疑者として10人以上のロヒンギャを射殺した。2年前の流入以来、ロヒンギャによる地元住民への強盗や空き巣が頻発。2年間にキャンプ内で50人近くのロヒンギャが別のロヒンギャに殺害されるなど治安は悪化する一方だ。治安の悪化に怒りを募らせた地元住民によるロヒンギャが営む露店の破壊や、道路封鎖も起きており、関係性は明らかに悪くなっている。

 他にも、ヒンズー教徒の女性は「犯人はわからないが大切な牛を2頭盗まれた。ロヒンギャは威張っているし、怖い。早く帰ってほしいが、ここは快適だからきっと帰らないだろう」と語る。

 数十万人のロヒンギャ難民が集結した抗議集会に対して、幾つかの地元メディアは「難民が政治活動を行うのは、国連やNGOなどが手厚く保護するからだ」と批判的な記事を掲載した。様々な代償を払い難民を受け入れているホストコミュニティのロヒンギャに対する心境は着実に変わりつつある。


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