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2019年11月8日

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龍神孝介 (りゅうじん・こうすけ)

フォトジャーナリスト

1981年生まれ。カリフォルニア州立大学フラトン校フォトコミュニケーション学科卒業。バングラデシュを中心にアジアで撮影を続ける写真家。2011年よりフリーランスとして活動する。

 バングラデシュ南東部の街コックスバザールからイスラム系少数民族ロヒンギャ難民が集まるキャンプへ近づくにつれ、幹線道路の脇には、おびただしい数の着の身着のままで疲れ切ったロヒンギャたちで埋め尽くされていた。2017年9月、ミャンマー政府による弾圧でミャンマーからバングラデシュへ大流出が起きた直後のことだ。

大人から子どもまで多くのロヒンギャが着の身着のまま移動していた(筆者撮影、以下同)

 支援や報道のためにキャンプへ向かう車で道路は大渋滞となり、一向に進まない車には幼い子供を連れた母親や子供たちが一斉に物乞いに群がる。軍の検問所でチェックを受ける人々の目は恐怖に満ち、皆疲れきっていた。

 「何十万人ものロヒンギャが国境を越えてバングラデシュに逃れてきている」。テレビのニュースを見ていた私は、僅かな荷物を抱え憔悴しきったロヒンギャの人たちが国境を越えて難民キャンプに向かう姿に釘付けになった。

 2017年8月25日、ミャンマー軍主体によるロヒンギャに対する大規模な弾圧が始まった。一部のロヒンギャの過激派が警察・軍関連の施設を襲撃したことに対する報復活動が発端とされる弾圧は「民族浄化」と国連に報告され、多くの死傷者や性的被害者を生み出した。その結果70万人以上のロヒンギャが隣国バングラデシュに逃れてきた。

 私はミャンマーから逃れてきたロヒンギャたちの現状を知りたいと思い立ち、すぐにバングラデシュへの航空券を手配した。首都ダッカから夜行バスに乗り拠点となる街コックスバザールへ。そこからさらに2時間かけてようやく現地にたどり着いて見た光景が壮絶な現場だった。

 赤子を抱えたまま茫然と座っている女性や、裸足のまま彷徨っている家族。ナイフで頭を切られた人、銃や迫撃砲で負傷している人もたくさんいた。ほんの数日前に家族を殺された人や、家を焼き払われた人たちが話を聞いてくれと訴えてくる。何日もかけてようやくキャンプにたどり着いた難民たちは、竹と防水のビニールで作られた簡易なテントで過ごし、あたりには異臭が漂い、ゴミが散乱していた。

 バングラデシュ国内のみならず世界中からボランティアやNGOの人たちが炊き出しを行ったり救援物資を届けようとキャンプにやって来る。うだるような暑さの中、トラックの荷台から投げられる救援物資には、老若男女問わず殺到し奪い合いが起きる。キャンプに流入する人は増え続け、丘は切り開かれ無数の簡易テントが次々と造られていく。まさに異常な事態が起こっていることが分かった。

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