2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年12月17日

 バングラデシュとミャンマーは11月15日、ロヒンギャ難民のミャンマー送還を強引に始めようとした。何台ものバスを難民キャンプに集結させ、バングラデシュの軍がロヒンギャを無理やりミャンマーへ送還しようとするに至った。ミャンマーが承認して2200名のリストに載せられた者の多くは逃げ出し最寄りの森に駆け込んだという。その結果、両国の企ては未遂に終わった。

(fongfong2/lonelytravel/Michał Fiałkowski/iStock

 11月15日は、両国が合意した帰還計画により第一陣が帰国する日だったというが、どうしてこういう強引なことになったのか定かではない。11月22日付けニューヨーク・タイムズ紙社説‘No Excuse for Myanmar’s Treatment for the Rohingya’は、中国の圧力を受けた結果だと指摘している。ただ、その根拠は不明である。ラカイン州のチャウピュ―が「一帯一路」の拠点とされており(昆明までのパイプラインが敷かれており、中国の国有企業「中国中信集団」(CITIC)などがチャウピューの深海港開発に関与している)、そのことと関係があるのかもしれない。アウン・サン・スー・チーをトップとする「一帯一路実施運営委員会」設立の見通しも報じられており、中国とミャンマーの関係強化の動きが強まっていることは間違いなさそうである。

 ロヒンギャ難民の自発的な帰還が実現する様子は一向にない。バングラデシュ国民のロヒンギャに対する感情は敵対的に変化して来ており、この一件は12月30日に予定される総選挙を睨んで政権与党のアワミ連盟が仕組んだものではないかとの憶測もある。

 また、バングラデシュにはベンガル湾の無人島ブハサン・チャール(Bhasan Char)に当面10万人のロヒンギャを移す計画があるという。この島はこの20年間にメグナ川の堆積土で形成された場所で、高潮の際には数十センチの水に覆われサイクロンに脆弱で危険な場所だが、バングラデシュの海軍と中国の建設業者によって住宅などが整備されたという。しかし、ロヒンギャが生計を立て得るような場所ではない。この計画は目下のところ棚上げされているらしい。


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