2024年12月15日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年12月25日

 中国の王毅外相がミャンマーを訪問、ロヒンギャ問題への新提案をしたことについて、ウォール・ストリート・ジャーナル紙の11月21日付け社説は、中国の提案は不適切であると批判しています。要旨は次の通りです。

(iStock.com/xiao-ming/sldesign78/Hermsdorf)

 中国の王毅外相は11月19日、ミャンマーを訪問、ロヒンギャの人道危機の解決策を提案した。中国はその影響力を、軍を抑制するために行使していない。中国の提案はミャンマー政府による少数民族の誤った扱いを助長するだろう。

 ミャンマー軍は8月下旬、ロヒンギャの小規模武装勢力による陸軍施設への攻撃を理由として、掃討作戦に踏み切った。目撃情報によれば、兵士は多くの文民を殺害し、レイプした。衛星写真からは、約300のロヒンギャの村が焼かれたことが確認できる。過去3か月、60万人以上のロヒンギャが隣国バングラデシュに流入、さらに数千人が脱出を試みている。

 中国は当初、ミャンマー軍の行動を「国家安定の維持」に必要として支持、国連安保理による暴力非難決議に拒否権を行使した。対ミャンマー制裁や国際刑事裁判所への付託の圧力が高まっているが、王毅は中国のミャンマー支持が確固たるものであることを示した。

 王毅の新提案は、まず停戦と安定の回復を求めている。それに異を唱えるのは難しいが、ミャンマーには迫害対象のロヒンギャはほとんど残っていない。12万人からなる最後の大規模グループは、2012年以来シットウェ郊外のキャンプに収容されている。

 同提案は第二に、ミャンマーとバングラデシュが、他国や他のグループの同席無しで、危機の解決策を話し合うよう求めている。これは、ミャンマーが国連の関与を拒否するのを助長する。バングラデシュとの対話は既に始まっているが、バングラデシュのみではミャンマーに象徴的な数の難民の帰還を認めさせる以上のことはできないであろう。

 第三に、中国は、あらゆる政治的不安定に対する同国の標準的対応、すなわち経済発展を提案している。王毅は、雲南省、ヤンゴン、ロヒンギャが住むラカイン州を結ぶ経済回廊についての新計画を公表した。

 西側諸国は、ロヒンギャ問題でミャンマーに圧力をかけるべく制裁を検討しているが、中国のミャンマー支持は、制裁が限られた梃子にしかならないことを意味する。アウンサン・スー・チーの側近は本紙に、制裁はミャンマーを中国の影響下に押し戻すだろう、と言っている。

 しかし、ミャンマーの民族浄化を放置するのにもリスクがある。スー・チーは軍に接近し、批判するジャーナリストを弾圧している。ミャンマーの他の民族グループは、権利の縮小に直面している。ロヒンギャ危機はミャンマーの政治的軌道を変え、中国による支援は極端なナショナリズムへの動きを加速し得る。

出典:‘China’s Burma ‘Solution’’(Wall Street Journal, November 21, 2-17)
https://www.wsj.com/articles/chinas-burma-solution-1511310714


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