2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年11月30日

 10月21日付の英エコノミスト誌が、多数のロヒンギャ難民が長期にわたってバングラデシュにとどまるとの前提に立って彼等の生活環境改善のための支援を講ずる必要があるという論説を書いています。論旨は次の通りです。

(iStock.com/obeyleesin/michaklootwijk/cloverphoto/vinhdav/mel-nik)

 隣国バングラデシュへの難民の流出は間もなく先細りとなる、何故ならミャンマーの軍が焼き払うロヒンギャの村がなくなってきたからだと慈善団体の職員はいう。しかし、目下のところは、恐怖におののくロヒンギャの流出が続いており、14日に終わる週には18,000人が到着した。2カ月足らずのうちに少なくとも582,000人が到着した。この危機は近代の歴史で最も急激な国際的な人の移動を意味する。それはシリアからの難民流出の速度を上回る。

 バングラデシュは難民を受け入れ、難民キャンプのための土地を提供した。しかし、援助機関は追いついていない。難民の3分の1は十分な食料の配給を得られていない。キャンプの衛生状態は劣悪で病気の蔓延を引き起こしかねない。新たに到着する難民にコレラの予防注射が行われているが、半数にしか出来ていない。長期的に必要なことは殆ど何も手当されていない。学齢期の児童の10人に1人以下しか学校と名の付く教育を受けていない。2,300の教室が必要だというが、この一週間で20の教室が作られた。

 ミャンマー政府はロヒンギャの帰還は受け入れるといい、生活再建を助けるというが、軍が村を焼き払っている状況では、その約束に意味はない。アウン・サン・スー・チーには軍を抑え込む権限がないが、暴力的な民族浄化を非難することさえしていない。仮に軍が文民統制の下にあったとしても、彼女の政府の態度では信頼を持ち得まい。数日前、ロヒンギャの帰還を担当する閣僚が彼等は彼等自身で民族浄化を行ったのだと述べた。

 難民帰還に係わるミャンマー政府の申し出は誠実なものだと仮定しても、そのプロセスには時間を要する。バングラデシュとミャンマーは国連を巻き込むべきかどうかを議論し始めている。1991から92年にかけて、ひとしきりの暴力で数十万人がバングラデシュに逃れたが、帰還を希望した者のほんの一部を帰還させるだけでも5年を要した。

 このように、多数のロヒンギャが長期にわたってバングラデシュにとどまることになる。ミャンマーの軍と政府に残虐行為を止め、ロヒンギャの帰還を認めるよう圧力をかけるべきである。これまでの圧力は微温的で馬鹿げている。

 一方で、難民の生活を耐えられる程度に改善するための一致した努力がなされる必要がある。援助資金と援助要員をキャンプに送らねばならない。バングラデシュ政府はロヒンギャが逃亡生活を改善する自由を与えるべきである。職に就くこと、学校・大学に通うことが許されるべきである。近く元いた場所に帰還できるという希望が心細いものに過ぎない状況で、難民が長期に必要とすることを無視することは一つの不正義の上にもう一つの不正義を積み重ねることになる。

出典:Economist ‘Not nearly enough is being done for the Rohingyas fleeing Myanmar’ (October 21, 2017)

https://www.economist.com/news/leaders/21730414-aid-agencies-cannot-keep-up-ever-swelling-numbers-not-nearly-enough-being-done


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