
国際オリンピック委員会(IOC)の会長選挙が20日あり、ジンバブエの元競泳選手で現在スポーツ相を務めるカースティ・コヴェントリー氏(41)が選ばれた。女性およびアフリカ出身の会長は初めて。男性候補6人を破っての選出が「強力なシグナル」を送ることを期待すると、同氏は述べた。
コヴェントリー氏は1回目の投票で、有効投票97票のうち過半数の49票を獲得した。次点はIOC副会長のフアン・アントニオ・サマランチ・ジュニア氏(スペイン)で28票。世界陸連会長のセバスチャン・コー氏(イギリス)は8票、国際体操連盟会長の渡辺守成氏(日本)は4票だった。
コヴェントリー氏は、IOCを2013年から率いてきたトーマス・バッハ会長の後任に、6月23日に就任する。IOCの130年の歴史で最も若い会長となる。
IOC会長としての初のオリンピック(五輪)は、2026年2月のミラノ・コルティナ冬季大会となる。
コヴェントリー氏は「これは本当に強力なシグナルだ。私たちが真にグローバルであり、真に多様性に開かれた組織へと進化し、これからの8年間もその道を歩き続けるというシグナルだ」と述べた。
同氏はIOC理事会の現メンバーで、バッハ氏が推していると言われていた。第10代会長として、最短でも8年間、その役を務める。
コヴェントリー氏は選手時代、ジンバブエが獲得した五輪メダル8個のうちの7個を同国にもたらした。2004年アテネ大会と2008年北京大会では、200メートル背泳ぎで金メダルを獲得した。
同氏は、「ジンバブエで水泳を始めた少女時代、こんな瞬間が来るなんて夢にも思わなかった」、「IOC初の女性会長、アフリカ出身会長であることを特に誇りに思う」と述べた。
さらに、「この投票が多くの人々にインスピレーションを与えることを願っている。今日、ガラスの天井が打ち砕かれた。ロールモデルとしての責任を、私は十分自覚している」と話した。
対トランプ氏は「コミュニケーションが鍵」
コヴェントリー氏は選挙活動で、IOCの近代化や持続可能性の促進、テクノロジーの導入、アスリートの地位向上を約束した。
また、女性スポーツ選手の保護を特に強調。トランスジェンダー女性の五輪女子競技への出場の全面禁止を支持するとした。
2028年に予定されているロサンゼルス大会をめぐっては、ドナルド・トランプ米大統領の移民政策によって、選手らが必要なビザ(査証)を入手できなくなる事態が懸念されている。
このことについてコヴェントリー氏は、トランプ氏との「コミュニケーションが鍵になる」との考えを表明。「私は20歳のころから、まあ言ってみれば、地位の高い難しい人々と付き合ってきた」と述べた。
BBCのダン・ローアン・スポーツ編集長は、今回の会長選の結果について、バッハ氏がコヴェントリー氏を支持していたとされることから、バッハ氏の影響力を反映したものと受け止められるだろうと解説。
コヴェントリー氏は今後、ロシアの五輪復帰、トランプ米大統領、ジェンダー適格性、気候変動、五輪の継続など、多くの問題に取り組むことになるとした。
(英語記事 Coventry elected first female IOC president as Coe beaten)