2025年3月25日(火)

商いのレッスン

2025年3月22日

<今月のお悩み>
この春から社会人になります。就職活動がうまくいかず、志望していた企業ではないこともあり、働く意欲が湧きません。
(Kiwis/gettyimages)

 「働く」という字は、実は漢字ではない。日本でつくられた「国字」の一つで、使われ始めたのは明治以降。それ以前は「はたらく」とひらがなで用いられてきた。「端」を「楽」にするという語源を持つ大和言葉である。

 英語では「work」が意味の近い言葉だが、成り立ちからして異なる。workの語源であるwergとは「作る」であり、「やっかいな」という意味のirksomeと同じ語源を持つという。

 「働」という字は「人」のために「動」くと書く。日本人は古来、労働を単に金銭を得るためだけの手段として捉えていなかった。根底には、関わる人の役に立ち、その結果として自らも幸せになるという労働観がある。

「働く幸せ」の道

 生前、「働くとは、人のために動くこと」を信念とする経営者がいた。

 2019年2月に86歳で亡くなった大山泰弘さんは、父が創業したチョーク製造業「日本理化学工業」を23歳で承継。4年目のとき、本人いわく「ちょっとした同情心となりゆき」により、2人の知的障害者を雇用することになった。

 雇用といっても2週間程度の実習である。当時、「終えればお帰しするつもり」と大山さんは考えていた。


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