ところが、2人の熱心な働きぶりに感化された社員たちが正式な雇用を懇願。以来、障害のある社員がまず今ある能力で仕事ができるように、そして、より能力を高めていけるように作業方法の工夫・改善を行い、環境づくりに努めてきた。現在、同社の社員の70%以上が知的障害者である。
しかし、その道のりは平たんではなかった。「理念だけで会社を経営することができるわけではありません。理念を『形』にする必要があります」と大山さんは自著『「働く幸せ」の道』(WAVE出版)で記している。
同社の歴史は、障害者の能力に合わせて健常者と同じ結果が出るようにする「工程改革」の歴史であり、理念を形にするための収益力向上の歩みだった。「ダストレスチョーク」や「ホタテ貝殻チョーク」、様々な用途で使える筆記具「キットパス」といった独自性を持った商品による市場創造があってこそ、理念は形になる。
同社の工場敷地内に立つ「働く幸せの像」の台座には、大山さんの次の言葉が刻まれている。
「導師は人間の究極の幸せは、人に愛されること、人にほめられること、人の役に立つこと、人から必要とされること、の四つと云われた。働くことによって愛以外の三つの幸せは得られるのだ。私はその愛までも得られると思う。」
筆者の手元にある著書には、大山さんの直筆で「利他の歩みこそ、より大きな自己実現への道」と書かれている。「これこそが、私が彼らに教えられ、導かれた人生の意味なのです」という。
あなたも、利他の道を歩み、その先に広がる自己実現への道を進んではいかがだろうか。
意に沿わない仕事も
あなたを磨き
強くする力を秘めている