2025年3月30日(日)

商いのレッスン

2025年3月22日

 ところが、2人の熱心な働きぶりに感化された社員たちが正式な雇用を懇願。以来、障害のある社員がまず今ある能力で仕事ができるように、そして、より能力を高めていけるように作業方法の工夫・改善を行い、環境づくりに努めてきた。現在、同社の社員の70%以上が知的障害者である。

「働く幸せ」の道』
大山 泰弘 著
WAVE出版
¥1,650 税込

 しかし、その道のりは平たんではなかった。「理念だけで会社を経営することができるわけではありません。理念を『形』にする必要があります」と大山さんは自著『「働く幸せ」の道』(WAVE出版)で記している。

 同社の歴史は、障害者の能力に合わせて健常者と同じ結果が出るようにする「工程改革」の歴史であり、理念を形にするための収益力向上の歩みだった。「ダストレスチョーク」や「ホタテ貝殻チョーク」、様々な用途で使える筆記具「キットパス」といった独自性を持った商品による市場創造があってこそ、理念は形になる。

 同社の工場敷地内に立つ「働く幸せの像」の台座には、大山さんの次の言葉が刻まれている。

 「導師は人間の究極の幸せは、人に愛されること、人にほめられること、人の役に立つこと、人から必要とされること、の四つと云われた。働くことによって愛以外の三つの幸せは得られるのだ。私はその愛までも得られると思う。」

 筆者の手元にある著書には、大山さんの直筆で「利他の歩みこそ、より大きな自己実現への道」と書かれている。「これこそが、私が彼らに教えられ、導かれた人生の意味なのです」という。

 あなたも、利他の道を歩み、その先に広がる自己実現への道を進んではいかがだろうか。

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Wedge 2025年4月号より
民主主義が SNSに呑まれる日
民主主義が SNSに呑まれる日

「超選挙イヤー」の2024年。日本でも東京都知事選や衆院選、兵庫県知事選があった。一連の選挙で〝主役〟のように存在感を高めたのが、「SNS」だ。刺激的な情報や分かりやすい「言葉」に翻弄された有権者も少なくなかっただろう。日本の民主主義は今、押し寄せるSNSの荒波に呑み込まれようとしている。だが、問題をそのことだけに矮小化せず、本質的な課題にも目を向けるべきだ。今年は参院選も行われる。「民主主義×SNS」の未来は吉と出るか凶と出るか─。


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