
英ロンドン・ヒースロー空港は21日、電力の供給を受けている近くの変電所で火災が発生したため、空港を終日閉鎖すると発表した。これにより、多くの発着便が欠航や行き先変更を余儀なくされた。
ヒースローは、イギリスで最も利用者数が多い空港。同空港は声明で、変電所の大きな火災により「大規模な停電」が発生したと説明。「利用者と従業員の安全を維持するため、空港を3月21日午後11時59分まで閉鎖する」とした。
また、「電力がいつ確実に復旧するかは明確ではない」とし、「この状況を解決するために可能な限り努力している」と付け加えた。
さらに、今後数日にわたって「重大な混乱」が予想されると警告。空港には再開まで「いかなる状況でも」行かないよう、利用者に呼び掛けた。
航空便の追跡サイト「フライトレーダー24」によると、ヒースロー空港では21日、発着予定の少なくとも1351便がキャンセルされる可能性があるという。
火災の原因はまだ明らかになっていない。
ヒースローはイギリス最大の空港で、毎日約1300便が離着陸している。昨年は過去最多の8390万人の乗客がターミナルを通過した。
今回の閉鎖により、ヒースロー空港へ飛行中だった少なくとも120便が着陸地の変更を余儀なくされたとみられている。
フライトレーダー24によると、ドーハとバーレーンからヒースローに向かっていた2便が、共に独フランクフルトに到着した。また、香港からのキャセイ・パシフィック便はオランダ・アムステルダムに行き先を変えた。
日本航空(JAL)の羽田発ヒースロー行きJL41便は、フィンランドのヘルシンキ国際空港に着陸した。一方、同JL43便は羽田空港に引き返した。
全日空(ANA)の同NH211便も、羽田空港に引き返し後、欠航となる見通し。
羽田空港のウェブサイトによると、22日にヒースロー空港から到着予定の便はほぼすべて欠航となっている。
ロンドン・ガトウィック空港は、ヒースロー空港の閉鎖に対応し、「行き先変更便を必要に応じて受け入れている」と発表。すでに、ヒースローに着陸予定だった7便を受け入れたとした。
また、「本日、ロンドン・ガトウィックからのフライトは通常通り運航している」と、同空港は付け加えた。
ヒースロー空港を拠点としている英ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)は声明で、「今後24時間およびそれ以降の旅行オプションについて、できるだけ早く顧客に情報を提供するために取り組んでいる」とした。
また、「可能な限り、ヒースローに向かっている便の行き先を、イギリスの他の空港に変更している」と付け加えた。
ヒースロー周辺では空港だけでなく、電車の運行にも影響が出た。
ヒースロー空港とパディントン駅を結ぶヒースロー・エクスプレスは運行が取りやめとなり、空港への移動は控えるよう呼びかけられた。
また、ロンドン交通局(TfL)によると、地下鉄エリザベス線のヘイズ・アンド・ハーリントン駅とヒースロー空港駅間の運行が停止した。パディントン駅とヘイズ・アンド・ハーリントン駅間では大幅な遅延が発生した。
英送電会社ナショナル・グリッドによると、ロンドン西部のノースハイド変電所で火災により設備が損傷し、一部地域への電力供給が停止した。
また、火災の影響で、周辺の建物から約150人が避難したという。
ロンドン消防隊は21日午前6時の時点で、変電所内の変圧器の一部がまだ燃えていると発表した。
声明では、消防士が「火災を制御するために懸命に働いている」とし、「朝に向かうにつれて混乱が増すことが予想されるため、可能な限りこの地域を避けるよう人々に促している」と説明した。
現場には、消防車10台と約70人の消防士が出動しているという。
エド・ミリバンド・エネルギー相は21日朝、BBCの番組ブレックファストで、ヒースロー空港とその周辺地域の混乱について語った。
ミリバンド氏は、ナショナル・グリッドが「できる限りのことをしている」と述べた上で、状況は急速に変化しており、政府も「ナショナル・グリッドの作業に協力するためにできる限りのことをする」と付け加えた。
一方、なぜ利用者の多い交通拠点が、変電所の火災によって深刻な混乱に巻き込まれ、非常に脆弱(ぜいじゃく)に見えるのかと問われると、「その質問に答えるのはまだ早い。火災の原因はわかっていない。これは明らかに前例のない出来事だ」と述べた。
その上で、政府は原因を理解し、「どのような教訓が得られるか」を知りたいが、現在の優先事項は火災の消火と電力の復旧、旅行の混乱の解消だと述べた。
<解説> 「悪夢」という言葉では不十分――ショーン・ディリー交通担当編集委員
今回の混乱の真の姿を描写するには、「悪夢」という言葉ではあまりにも弱い。
ヒースロー空港の当局はあらゆる危機管理会議を開催し、世界で2番目に大きな空港に依存する航空各社はバックアップ計画を大忙しで進めている。
すべての事態に対して緊急時対応計画はあるが、イギリスと欧州全域のフライトプランナー、航空会社、空港にとって、問題は「処理能力」の一言に集約される。
ロンドンの緊急サービスが火災の原因を究明する一方で、空港と航空会社には二つの重要な課題がある。
まずは、旅行者や経済への被害をどのように最小限に抑えるかということだ。
もう一つは、今日21日を超えて続く課題だ。フライトプランは、航空機が適切な場所に適切な時間に配置されるよう、綿密に調整されている。
航空機は遠く離れた空港に駐機され、乗客は疑問や質問を抱え、当局は混乱の影響を理解したいと考えている。
この影響はヒースロー空港をはるかに超え、さらに遠くのフライトにも影響を及ぼす可能性がある。
(英語記事 Major disruption as Heathrow closed all day after nearby fire causes power outage)