2025年3月22日(土)

BBC News

2025年3月21日

教育省の解体を開始するよう当局に命じる大統領令に署名するトランプ米大統領(20日、ワシントン)

アメリカのドナルド・トランプ大統領は20日、教育省の解体を開始するよう命じる大統領令に署名した。教育省の解体は、2024年の米大統領選でトランプ氏が掲げた公約の一つ。

トランプ氏は大統領令に署名し、「我々はできるだけ早く、(教育省を)閉鎖する」、「(教育省は)我々にとって何の役にも立っていない」と述べた。

トランプ氏は長らく、教育省の廃止を求めてきた。廃止は一部の保守派の強い願いとなっているが、議会での法案通過が必要で、実際にそうなる可能性は低い。

教育省をめぐっては先週、職員の大幅削減が発表されていた。こうした解体への動きはすでに、法的な異議申し立てに直面している。

トランプ氏は「アメリカは教育に対し、ほかのどの国よりも多額の資金を費やしている」にもかかわらず、学生たちは「成功という点では最下位に近い」と述べた。

ホワイトハウスは、トランプ政権が法的な範囲内で教育省の一部削減に動くとしている。

連邦政府の規模縮小を目指すトランプ政権の多くの取り組みと同様、今回の大統領令も法的な異議申し立てに直面する可能性が高い。

トランプ氏は大統領令に署名する際、リンダ・マクマホン教育長官を称賛し、マクマホン氏が最後の教育長官になることを望んでいるとした。

そして、政権内でマクマホン氏のために「何かほかのこと」を見つけるつもりだと述べた。

大統領令への署名を受け、共和党のビル・キャシディ上院議員(ルイジアナ州)は、教育省の閉鎖を目的とした法案を提出する計画を発表した。

ただ、共和党は上院で多数派ではあるものの、53議席で、民主党(47議席)とは僅差だ。連邦政府機関の閉鎖には賛成60票が必要で、実現する可能性は低い。

仮に教育省が正式に閉鎖されなかったとしても、トランプ政権は、主要な対外援助機関、国際開発局(USAID)に対して行ったように、教育省への資金と職員を削減する可能性がある。USAIDは多くのプログラムや人道的活動を停止することとなった。

大統領令の狙いは

今回の大統領令には、政権がどのような行動を取り、どのプログラムが廃止され得るのかといった、具体的な内容は含まれていない。

大統領令は、教育省の「閉鎖を促進するために必要なあらゆる措置を講じ」、州や地方自治体にその権限を与えるよう、マクマホン教育長官に命じている。

また、「アメリカ人が頼りにしているサービスやプログラム、給付金の効果的かつ途切れることのない提供」を確保するよう指示している。

1979年に設立された教育省は、学生ローンの管理や、低所得の学生を支援するプログラムの運営を担っている。

トランプ氏は、教育省が若者に対し、人種的、性的、政治的な洗脳を行っていると非難している。

アメリカの子供のほとんどは、地方当局が管理する、学費がかからない公立学校に通っている。連邦政府の教育省が学校を運営し、カリキュラムを作成していると誤解されがちだが、これらを担っているのは主に州や地元の学区だ。

また、初等・中等学校の資金に占める連邦政府の拠出の割合は約13%と比較的少ない。資金の大半は州や地方の税金でまかなわれている。

教育省は、アメリカ人が高等教育を受けるために利用している連邦学生ローンの管理・監督においても、重要な役割を果たしている。

マクマホン氏は教育長官に就任して間もなく、教育省の職員4400人に対し、「我々の省の最後の任務」と題したメモを送付していた。これは、トランプ氏が同省の閉鎖を目指していることを示していた可能性がある。

メモには、「これは、未来の学生世代に向けた、最後の、いつまでも記憶される、公共サービスを実行する機会だ」、「我々の最後のミッションが完了した時に、アメリカの教育をより自由に、より強くしたと、そして未来により多くの希望を残したと言えるように、みなさんが私に加わってくれることを望んでいる」と書かれていた。

トランプ氏をめぐっては、教育省のいくつかのプログラムを終了させ、残りのプログラムを財務省など別の省庁に移すことを検討していると、複数メディアが報じていた。しかし、大統領令には明確な記載はなかった。

トランプ氏と共和党の支持者たちは、教育省がリベラル派の『ウォーク』(woke、社会問題への認識が高いこと)の政治的イデオロギーを推進し、ジェンダーや人種に関するリベラルな見解を押し付けていると非難している。

米最大の教職員組合は最近、トランプ氏の計画を批判。同氏について、「すべての子供たちのための機会について関心がない」とした。

アメリカ教員連盟(AFT)は声明で、「官僚主義が好きな人はいないし、誰もが効率化を望んでいる。それを達成する方法を見つけよう」と呼びかけた。

「しかし、億万長者にバウチャーや減税を提供するために、『ウォークとの戦い』を利用して貧困にあえぐ子供たちや障害のある子供たちを攻撃すのはやめてほしい」とも訴えた。

保守派は40年以上もの間、教育省に不満を抱き、廃止を提案していた。

民主党のジミー・カーター大統領によって設立されてからわずか2年後、後任のロナルド・レーガン大統領(共和党)は、経費節減と「地域のニーズと好み」を優先するために、教育省の廃止を呼びかけるようになった。

4400人の職員を抱える教育省は、連邦行政機関の中で最も小規模で、予算は連邦予算全体の2%にも満たない。

教育省職員の一部はすでに、政府効率化局(DOGE)が主導する、トランプ政権の徹底的な人員削減の影響に直面している。多くの職員が退職を促されたり、解雇されたり、有給休暇扱いにされたりしている。

同省では3月21日から、2100人近くが休暇扱いとなる。

連邦政府のコスト削減や、多くの政府機関の抜本的な再構築あるいは単純な廃止といった、DOGEの取り組みは、ハイテク業界の富豪イーロン・マスク氏が監督している。

(英語記事 Trump signs order to begin dismantling of US education department

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/cvg5l3v7119o


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