2025年3月25日(火)

新しい〝付加価値〟最前線

2025年3月22日

 絵本『おいしいまほうのたび きょうのよるごはん』(おいしいまほうのたび 2、ニジノ絵本屋)が出版された。アグリバトン プロジェクトの食育絵本の第2弾だ。アグリバトン プロジェクトは、「農業を子供たちの憧れの職業に!」を目標に、農業の魅力を伝える絵本を出版し、子どもたちに読み聞かせを行う活動をしている。彼らの活動は高く評価されており、第7回食育活動表彰 農林水産大臣署を受賞している。プロジェクトを支持者も増え、より広く活動するために、2024年3月からNPO(特定非営利活動)法人になった。

 最初の絵本は、『おいしいまほうのたび あさごはんのたね』(関連記事:「農家に嫁いで分かった農業の価値
絵本『あさごはんのたね』書評インタビュー」
)。

 あさごはんで使われる野菜が、食卓に辿り着くまでのお話。あさごはんのとき、おとうさんから、「今日、畑に種をまくよ」と誘われた兄妹。先に畑に行ったお父さんの後から、出発した2人は畑の妖精「はたぽん」に出会います。それから2人は野菜を巡る冒険に……。

 令和らしいのは、「QRコード」で関連した「動画が見られる」こと。動画も長いと飽きる可能性があるが、短い動画は程よい刺激なので子どもは大好き。

 また、巻末には「手遊び歌」の楽譜も付いている。こちらもQRコードで動画を確認楽しむことができる。昭和にはソノシート付きという、ペラペラの耐久性のないレコードが付けられていた絵本があった。ソノシートは再生時ポータブル・プレーヤーなども必要だったが、今は親御さんが持っているスマホで用が足りる。

 野菜の「豆知識」なども細かい字で書かれているが、巻末の「農業ってたのしい!おもしろい!」が、やはりこの本ならではの企画。何としても農に興味を持ってもらおうという意欲が紙面から溢れ出ている。絵本と言う名のマルチメディアだ。

第2弾は、肉牛が主役

 第2冊目は晩御飯のハンバーグ、肉牛が主役だ。これも似た形でまとめられている。QRコード、唄、解説なども継続している。だが、決定的に違うことがある。肉を食べると言うことは、相手の命を奪い食料とし、自分が生きることを理解するということだ。

 農に興味持たせることも必要だが、自分が食物連鎖の中にいることを納得するように、うまく説明しなければならない。数歳の子どもが罪の意識に悩まされたり、お肉を食べることをいやがったりしないようにだ。

 絵本では、妖精の「はたぽん」が、子どもの「ゆうくん」を牛舎に連れて行ってくれる。大事に育てられていることに感激する。ところが、

(牛舎で働く)おねえさんは「あったかいよね」
そういって うしが きれいに なると さくから だしました。
「どこへ いくの?」
「このこは りっぱに 大きく そだったから おにくに なるんだよ」
「おにく? いつも 食べている あのおにく!?」
ゆうくんはびっくりしました。

  そこで、はたぽんが教えてくれる。

「たべることは いきること。わたしたちは みんな たべることで おおきく なれるんだよ」

「いただきますって なんのこと? うさぎも きつねも いのししも ひよこも くじらも にんげんも みーんな なにかを たべてるね いのちを いただき いきてるね」

 そして、おねさんが子牛と見つめ合って言う。

「わたしはね いつも おもっているよ。うしたちに ありがとうって」

 単純ながら非常に力が入った見開きだ。おねさんのなんとも言い難い表情から、子どももわかってくれるのではないだろうか。また、ここは読み聞かせする人のがんばりどころでもある。多分、子どもの「どうして」攻めが来るだろうし、ここは頑張りどころである。


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