
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は20日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領について、「戦争を長引かせるだけの不必要な要求をやめるべきだ」と述べた。また、ウクライナとアメリカの当局者が24日にサウジアラビアで協議する予定だと明らかにした。
ゼレンスキー氏はこの日、ベルギー・ブリュッセルで開かれた欧州連合(EU)首脳会議にビデオリンクで出席。「プーチンは世界に対して約束したことを実行に移さなければならない」と述べた。
また、「ロシアはある瞬間には約束するが、数時間後にはその約束はまったく意味を持たなくなる」として、プーチン大統領に圧力をかけ続けるよう各国に呼びかけた。
そのうえで、「ロシアが我々の土地から撤退し、侵略行為によって引き起こされた損害を完全に補償するまで」、ロシア政府に対する制裁を継続するよう訴えた。
ゼレンスキー氏とプーチン氏はそれぞれ、アメリカのドナルド・トランプ大統領と協議し、原則として停戦に合意している。だが、条件で折り合わず、停戦は実現していない。
ロシア側の要求には、ウクライナへの軍事援助と情報共有の完全な停止や、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟の否定が含まれている。
プーチン氏は18日にトランプ氏と電話会談し、ウクライナのエネルギーインフラへの空爆の停止に同意したが、双方の攻撃は続いている。20日には、夜間の攻撃でウクライナで2人が死亡した。一方、ロシアでもウクライナのドローン(無人機)攻撃があり、10人が負傷し、空港で火災が発生した。
ゼレンスキー氏はこの日の会議でEU各国に対し、軍事援助の継続をあらためて求め、砲弾のために少なくとも50億ユーロ(約8000億円)を「できるだけ早く」提供するよう要請。ウクライナへの継続的な支援が「極めて重要」だと述べた。
また、EUが和平交渉に関与する必要があると述べ、ヨーロッパに対して「戦争に関するロシアへの圧力を緩めないよう」促した。
原発所有権のアメリカへの譲渡を否定
ゼレンスキー氏はこの日、ノルウェーを訪問。ヨナス・ガール・ストーレ首相との共同記者会見で、24日にサウジアラビアでウクライナとアメリカの当局者が和平交渉を行う予定だと明らかにした。クレムリン(ロシア大統領府)も、同日に米ロ会談があると認めている。
ゼレンスキー氏によると、ウクライナの代表団は24日の会談で、ロシアの攻撃から保護したいインフラ施設のリストをアメリカに提出するという。
一方でゼレンスキー氏は、19日に行われたドナルド・トランプ米大統領との電話会談で、ウクライナの原子力発電所の所有権をアメリカに譲渡することについて話し合ったというホワイトハウスの主張を完全に否定した。
ゼレンスキー氏は、電話会談で現在ロシアの支配下にあるザポリッジャ原発について話し合ったとしたが、「すべての原子力発電所はウクライナの人々のものだ」と強調した。
ただし、ウクライナが同原発をロシアから取り戻した後に、アメリカが投資や近代化を行うことには前向きだと述べた。
マルコ・ルビオ米国務長官は先に、アメリカが所有することが「そのインフラの最もよい保護となる」と述べていた。
NATO加盟拒否は「ロシアへの大きな贈り物」
記者会見の中でゼレンスキー氏は、ロシアにウクライナの領土を譲るつもりがあるか、特に2014年からロシアの支配下にあるクリミアを譲渡するつもりがあるかとの質問に、「クリミアはウクライナの半島だ」、「ウクライナの不可分の一部だ」と述べた。
ロシアはクリミアを占領し併合したと主張しているが、国際的にはなお、ウクライナの一部と認識されている。
停戦がどのような形になるかという質問には、最初の段階は陸と海での停戦でなければならないと回答。ウクライナは、これがロシアの侵略を止める唯一の方法だと考えていると述べた。
さらに、ロシアが要求している、ウクライナのNATO加盟の可能性の否定については、「ロシアへの大きな贈り物」になってしまうと警告した。
ロシアのアレクサンデル・グルシュコ外務次官は16日、停戦の合意条件として、NATOがウクライナの加盟を拒否することと、同国が中立を維持することの保証を求めた。
ピート・ヘグセス米国防長官も、ウクライナがNATOに加盟する可能性を真剣に取り合わず、「交渉による解決の現実的な結果ではない」と述べている。
(英語記事 Zelensky tells Russia to drop 'unnecessary' demands ahead of peace talks/Live Report)