2024年7月20日(土)

田部康喜のTV読本

2012年4月18日

 この取材の主体は誰か。画面の片隅に「アジアプレス」の表示があらわれる。優れたフリーのジャーナリストの集団である。代表の石丸次郎が北朝鮮の内部について語る。北朝鮮の内部に情報網を築いてきたことに、敬意を表する。

 しかしながら、報ステの特集のありようはどうであろうか。アジアプレスの取材と、報ステなかんずく、テレ朝の報道局がどのように取材に関与したのか、あいまいなままに放映された印象が強い。

 文章でいうならば、引用と自説の区別がついていないのである。

客観的な視点が欠落

 この日の目玉ともいえる、もうひとつの特集もそうだ。内戦状態のシリアに潜入したジャーナリストの遠藤正雄のリポートである。トルコ側から雪山を踏破して国境を越えた遠藤に賛辞を惜しまない。

 遠藤の取材は、反政府軍が勢力下に収めた地域のルポルタージュである。政府軍によって、弟を殺された兄がこの反政府軍に加わるエピソードはすさまじい。

 特集のコアに遠藤のリポートを据えるとしても、ジャーナリズムの観点からいえば、シリア情勢の最近の動きと方向性について、テレ朝は客観的な視点をもっと加えなければない。

 この日、フジテレビの「LIVE2012 News Japan」(ニュースジャパン)のトップニュースは、北朝鮮の人工衛星という名目で発射したミサイルについて、日本政府の情報収集が遅れた、とされる問題だった。フジの報道部門は、一連の事態に政府の各部署がどのように動いたか、首相や防衛相にどのような報告がなされたか――時系列で書き留めた政府内の機密文書を手に入れて、ニュースジャパンは報じたのである。

 ニュースステーションが報ステに衣替えして、古舘伊知郎が起用されたとき、新番組の手本とされたのは、当時朝日新聞の第3面にほぼ毎日掲載された「時時刻刻」という特集だった。事件や事故、政局などをドキュメンタリーのように、登場人物や事象を追うものだった。

 凝縮された事実を積み重ねるためには、取材にかける人とモノ、そしてカネがかかる。放送局にあって、報道部門はカネ食い虫とされるが、報道の信頼性はその放送局のブランドを形成する大きな要因である。

 テレ朝は、2012年3月期決算で、放送収入つまり不動産収入などを除いた売上高が、開局から初めてTBSを抜いて、キー局3位に躍り出た。深夜帯のバラエティー番組が貢献したという。新聞社の桎梏から報道部門の自立が図られず、その地位を落とすことがないことを祈るばかりである。 (敬称略)



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