2024年12月11日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年4月24日

 ワシントン・ポスト4月6日付で、コラムニストのDavid Ignatiusが、トルコのエルドガン首相はソウルでオバマと会談した後、イランを訪問し、核武装さえしなければ、米国はイランの非軍事的核開発を支持する、とのオバマのメッセージを伝えたようだ、と言っています。

 すなわち、エルドガンはソウルでオバマと二時間会談したが、その際、オバマは「イランは核兵器を持つことは無い。それは罪だ」との2月のハメネイの発言を挙げて、米国の意向伝達を依頼した。ただ、民生用ウラン濃縮を許すかどうかまでは言及しなかったようだ。また、エルドガンは、シリア問題について、アサド支援を控えるようイランに提案するつもりだと述べたようだ。

 イランの核の件は、イランと5+1会議で議論されることになろうが、まだ開催地も決まっていない。イスタンブールが提案されたが、イラン側はイラクや中国を挙げている。イラン側の態度がはっきりしないのは、恐らく指導部の中で交渉方針がまだ決まっていないからだろう。

 この間、西側のイラン制裁は次第に厳しさを増している。やがてイランは石油輸出の3分の1を失うことになるが、7月1日以降、中国とEUがイラン原油輸送タンカーに保険をかけるのを止めれば、打撃はさらに拡大するだろう、と観測しています。

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 かつて、パネッタ国防長官は、イスラエルのイラン攻撃を4、5、6月頃と予想しましたが、早くもその4月となり、さらに最近イスラエルは、攻撃は「数カ月内、1年先ということはない」と述べて、今年中との可能性を示唆しました。

 当面、すべては、イランと5+1会議の結果いかんでしょうが、イスラエルのイラン攻撃は長くは抑えられないというのが国際常識となって来ています。他方、海峡封鎖などで米国と対決するのは非現実的であり、従って、イランはどこかで譲歩するだろうというのが一般の期待ですが、会議の場所さえ決められない状況では、あるいは、イラン国内の強硬派と穏健派の間で妥協点が見いだせないまま時間切れとなり、イランがイスラエルに攻撃されるという可能性も否定できません。あるいはイランが、イスラエルの攻撃に対して報復に出ずに敢えて甘受し、それによる愛国心の高まりの下に国民の結束を図るという選択肢を選ぶ可能性もあるでしょう。

 なお、トルコが、かつての反米、イスラム・ナショナリズム迎合の姿勢を捨てて、米国に協力する姿勢を示しているのは歓迎すべきことですが、その上に立って新たな国際的役割を果たせるかどうかは疑問です。リビア危機の際、トルコによる反乱軍とカダフィ間の仲介が噂されましたが、噂に留まりました。シリアに関しても、湾岸諸国などのスンニー・アラブ諸国と共に反アサド側についているトルコが、イランに対して説得力を持っているとは思えません。イスタンブールが交渉の場として拒否されたことは、それを物語っています。

 他方、気になるのは、5+1の場所として中国が言及されていることです。イランが本当に妥協するつもりなら、誰かに外交的に花を持たせる、あるいはそれを妥協の口実とするチャンスではあります。1994年のカーター訪朝のように、クリントン元大統領かオバマ自身のイラン訪問もあり得るでしょう。他方、イランにとっては、中国というのも理論的にあり得る選択と思われます。勿論、中国にとっては、国際的威信を高め、イランとの特殊関係を維持するための絶好のチャンスでしょう。


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