2024年12月23日(月)

Wedge REPORT

2020年3月10日

新型コロナウィル感染拡大から1カ月。流通業界では売上高が明暗を分けた状態となっている。その直撃を受けた百貨店はインバウンド(訪日外国人)のみならず、国内顧客の来店も減少、2月の大手百貨店の売上高は惨憺たる状況だった。これに対しマスク特需が発生したドラッグストアではマスク不足特需が発生し売り上げが大幅増。スーパーはすごもり消費の恩恵を受ける。その果たして新型コロナの終息宣言が出された後に日本の小売り、消費はどうなっているのか――。 

朝の東京・中野駅前。薬局に向かって長蛇の列が並ぶ

 真っ先に新型コロナの感染拡大の打撃を受けているといえるのが百貨店。大手百貨店4社は3月上旬、「2月の売上高」を発表したが軒並み2ケタの落ち込みだった。

 Jフロントリテイリングの大丸松坂屋百貨店では前年同月比21.8%減、三越伊勢丹ホールディングスの同15.3%減、エイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)の同14.3%減、高島屋の同11.7%減という状況だ。

 各社の免税売上高は大丸松坂屋百貨店が同75%減、H2Oが同73%減。中国人や韓国人訪日客の大阪人気を背景に、免税売上高を伸ばしてきたJフロント、H2Oが一転して大打撃を被っているほか、人気の観光地、東京・銀座でも主力店舗のある松屋の2月の免税売上高が同70%減という結果だった。 

 ある小売業大手は「百貨店はインバウンドに依存し過ぎたツケではないか」と手厳しいが、逆にドラッグストアの店頭はごった返しているというと大袈裟だが、平日の午前中でも混んでいる。

 大手ドラッグストアは2月の既存店売上高を発表している。3月上旬時点で数値を発表したのは大手のツルハHDとコスモス薬品など3社だが、ツルハHDは前年同月比で7.1%増、コスモス薬品は同11.3%増、ココカラファインは9.7%増と2ケタ、2ケタに近い伸び率を記録した。

 筆者の自宅近くのドラッグストアでも平日の午前中なのに、こんなに人がいるのかと思わせる混雑ぶり。多くの来店者の目的はマスクだ。

 「マスクはお1人様1点でお願いします」、「品切れしており入荷は未定です」。見慣れたドラッグストアのマスク売り場の案内表示。3月9日時点でマスクを買い求めるお客は引きも切らずココカラファインでも依然「店によっては商品が足りません」という。

 菅官房長官は2月12日の記者会見で「マスクメーカーに強く増産を要請した。毎週1億枚以上増産できる見通しができている」と話したが、あれから約1カ月。3月上旬現在、マスクが充足されている気配はない。

 政府はマスクメーカー3社に補助金を出すことを決めるなどして3月中には増産体制が敷かれるというが、あるドラッグストアでは「わずか3社の増産要請では到底賄いきれない」と吐き捨てる。マスクは中国からの輸入が8割を占めているといい、同じようにマスクが不足している中国から順調にマスクが輸入されるとみる関係者は少ない。

好調なネット販売

 こうした中で、小中高校の一斉休校が実施され、すごもり消費に拍車がかかった。その恩恵を受けているのはスーパーのネットスーパーだ。あるスーパーでは「コメ、カップ麺やレトルト食品などが品薄になっている」という。「ネット注文の場合、特定の商品は品切れしているものもあり、注文をキャンセルさせて頂いています」と話す。

 食品スーパー大手で首都圏地盤のヤオコーの2月の既存店売上高が前年同月比11.0%と、この1年で過去最高の伸びを記録した。

 ユニクロを展開するファーストリテイリングでは2月の既存店売上高が前年同月比0.8%増。同社では19年9月から連続して既存店売上高の前年比のマイナス状態が続いていたが、自社のネット販売がプラスに作用したとみられ、新型コロナによるすごもりで息を吹き返した。

 コロナの感染拡大で衝撃的だったのはライブハウスなどでクラスター感染が発生したことだろう。濃厚接触が起こりやすいライブハウスでのクラスターとみられる感染が発生。「すごもりは状態の一段と加速するのではないか」とみるのはあるコンビニエンスストアだ。

 政府はまた、3月9日から感染が広がっている中国、韓国からの入国を制限する措置を発動した。いずれも3月末までとしているが、感染状況いかんでは延長される可能性も高い。

 この措置について、ある百貨店ではいつまで続くのか分からない、萎縮ムードに「当面、国内のお客様に加え、免税売上高も回復は難しそうです」とあきらめ顔だ。

 国内外の人の流れが止まり、高額消費の受け皿となってきた百貨店は3月上旬の株価の大幅な下落で、2月に続いて3月以降も逆資産効果でお客が減り続ければ壊滅的な打撃を受けかねない。


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