「2万円も出して買ったのに、数列後ろの席が数千円だったと知り損をした気分になった」
2019年11月に千葉市の幕張メッセで開かれた音楽イベント「Yahoo!チケット EXPERIENCE VOL.1」。有名アーティストが多数出演したこの音楽フェスに参加した男性は、冒頭のように肩を落とす。
このフェスでは日本の音楽イベントで初めて「ダイナミックプライシング」が全席で導入された。チケット販売は3期間に分かれ、開催のおよそ2カ月前の第一期には、最前列の席が5万円超まではね上がった。しかし、前列の多くの席が埋まった後に価格は高止まりし、販売が伸びなかった。10月中旬からの第二期、11月上旬からの第三期でも、3000円ほどで売り出される席もあるほど、全体的に価格は低迷した。最終的に当日券はクーポン券を利用すると2000円で販売されたが、それでも開催日によっては空席が出た。
イベントを主催したヤフーとエイベックス・エンタテインメントが共同出資するチケット販売会社パスレボ(東京都千代田区)の林田清治副社長は次のように振り返る。
「音楽フェスに複数のアーティストが出演したが、それぞれのファンが適正と感じる価格が違っていた。結果的に販売したチケットの平均単価は想定を上回ったものの、一部の座席は値付けがうまくいかず売れ残ってしまった。どの席が売れ残っているかを全てオープンにしていたため、残席数と値動きが分かってしまい、開催直前まで売れ行きが伸びなかった」フェスを開催すること自体が初めてだったため、ファンがチケット購入を購入する時期や値段に関するデータもなかった。