2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2020年4月28日

 従業員が感染症にり患した、感染症の影響で店舗を休業する、といった情報を企業はどう発信するべきか。やり方を一つ間違えると企業のイメージ悪化や経営危機にも陥りかねない。危機管理広報を専門とするコンサルティング会社「エイレックス」の江良俊郎社長にインタビューした。

(zubada / gettyimages)

従業員に感染者が出た時は

えら・としろう エイレックス代表取締役/チーフコンサルタント。神奈川大学法学部卒業後、PR会社などを経て、2001年にエイレックスを設立。企業の事件・事故、不祥事など企業危機の際の対応経験は多く、現場へ出向き報道機関や関係者との交渉取り仕切りも進める。現在、公益社団法人日本パブリック・リレーションズ協会副理事長。

 「感染者が出た」という情報に対し、企業が公表しなければならないという法的な義務は課されていない。ただ、江良氏は「不特定多数の接触者が見込まれる感染者が出た場合は、注意喚起の意味も込めて公表した方が良い。後から判明するよりも企業としてのダメージが少ない」と指摘する。企業独自の発表については、厚生労働省も抑制はしていないという。

 「ひとえに従業員の感染といっても、窓口担当なのか、内勤なのかによっても状況は異なる。内勤の中で感染者が出たことを開示する必要があるのかは議論もあるが、営業職のように広い範囲での移動や多くの人と接触している従業員に関しては、多くの国民が感染ルートを気にしているため、公表するのが好ましい。もちろん、個人が特定されないように配慮することが求められる」と、状況によって異なる。「名古屋のスポーツジムが感染者がいた時間を指定したことや、同じ時間にいた会員に直接連絡したことは良い取り組みだと思う。対して、海外支店の現地社員のり患を発表するのはどれだけ意味があるのか」と指摘する。

 判断が難しいのは、企業ブランドを使っている関連会社に関する対応だ。例えば、新聞社の販売店では、新聞社本社には責任はないものの、看板は新聞社の名前を使っている。本社との契約関係に違いはあるものの、コンビニ店のフランチャイズについても状況は同じだ。「発表しないことによるマイナスイメージは大きいので、本社としては周囲への感染リスクが高い場合は公表するといった配慮が必要となる」

 また、どれだけの期間まで公表を続けるのかも判断が分かれる。「小売店などで出た場合、保健所の指導を受けながらり患従業員の濃厚接触者への検査や店舗の消毒、一定期間の休業、といった措置を取る。その後、店舗を再開できるのだが、問題ないとされる環境になっても開示し続けるべきなのか。ホームページで伝え続ける場合もあるし、店舗の張り紙や来店者へ口頭でといった形で伝えていることもある。顧客との信頼関係も重要となってくるので、安全性を伝えて安心して来てもらうために発信することが必要だ」


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