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2020年4月15日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

1864年、リンカーン大統領暗殺後には、A・ジョンソンが大統領に就任した( faustasyan/gettyimages)

 猖獗(しょうけつ)を極める新型コロナウィルスは、それと戦っている指揮官をも襲った。ジョンソン英首相が感染して入院、回復したものの一時は集中治療室に移された。ほかの国の指導者にとっても、ひとごとではないだろう。

 過去を振り返ってみると、国のトップが病に倒れることは決して少なくない。短期間で回復した人もいれば、残念ながら亡くなった人もいる。

 今回のコロナ危機、一国の指導者であっても、いつ感染するかわからないだけに、トップも恐々、〝バックアップ体制〟の必要性も現実味をもって感じさせる。

不思議な皇太子、首相の感染

 英国からの報道によると、ジョンソン首相は3月27日に、自らコロナウィルスに感染していることを公表し、自己隔離しながら、対策の指揮を執っていたが、その後入院。4月6日に容体が悪化し、集中治療室に移され、酸素吸入を受けた。治療のかいあってか回復に向かい、一般病室に戻り、12日には退院にこぎつけた。

 まだ執務できる状態ではなく、ロンドン郊外の別荘で静養する。妊娠中の首相の婚約者も感染、入院中という。

 外相のラーブ氏が首相代行として任にあたっているが、そのに能力不足が指摘されているという報道もあり、国民の不安と懸念が大きいことは容易に想像がつく。首相の静養期間は1カ月程度といわれ、緊急事態への対応に不安を残す。

 イギリスではコロナウィスル対策の直接の責任者である保健相らに加え、あろうことかチャールズ皇太子までが検査で陽性反応が出たというから驚く。

 一般の国民とは大きく異なる生活をしている皇太子や首相、いったいどこで感染するのか。経路は明らかではないらしいが、不思議というほかはない。それだけコロナウィルスの感染力が強いということであり、不気味このうえない。

 欧州では、ドイツのメルケル首相が2週間、自己隔離した。肺炎球菌のワクチン接種をした医師の陽性が明らかになったためだ。陰性が確認され、4月3日に職務に復帰した際、国民向けメッセージで「14日間一人で家にいて、電話やネットでしか外とつながらないことはつらいことだった」と振り返った。〝鉄の女〟、故サッチャー英元首相に比肩する首相にとっても想像を絶する体験だったようだ。

夕食会で倒れた米大統領

 リーダーの病は、その国だけでなく、世界に大きな影響を与える。状況や原因が大きく異なるが、過去の例をみてみよう。

 1992(平成4)年1月、国賓として日本訪問中のブッシュ大統領(先代)が首相官邸での晩餐会の席で嘔吐、一瞬ではあったものの、意識を失った。大統領は日本側が手配した病院に行くことをせず、宿舎の元赤坂の迎賓館にもどった。容体がわからず、急変に備えて、メディアは迎賓館前で徹夜した。

 幸い大事には至らず、大統領は翌日以降も予定通り日程をこなしたが、病状次第では大きな影響を与えるとあって、「ブッシュ倒れる」の報は直ちに世界に発信された。

 風邪気味にもかかわらず、無理をしてその日の午後、天皇(現上皇)陛下、皇太子殿下(現天皇陛下)のペアとテニスをしたのが原因だったらしい。 

 筆者は、大統領が倒れた時、官邸詰め、現場に居合わせて、取材にあたった。晩餐会が佳境にはいったと思われる時刻に、突然、救急車が正面玄関(当時は旧官邸)に横付けされた。記者たちが殺到した時、官邸ホールでは、シークレット・サービスとおぼしき男女が晩餐会場への出入りを押しとどめていた。

 青い顔をした大統領がおぼつかない足取りであらわれ、アメリカ人記者からの「どうしたのですか」との質問には肩をすくめるだけ答えず、車に乗り込んだ。核兵器のボタンが装着されているブラックボックスとおぼしき大型のカバンをもった将校らしい人物が足早にその後を追った。

 大統領が病院に向かった後、バーバラ夫人が「テニスに負けたせいでしょう」などと落ち着いて機知にとんだ挨拶をしたのはよくしられている。 

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