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2020年2月20日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 政権による「検察介入」が、時を同じくして先週、日米で報じられた。

 日本では、官邸が検察庁法を無視して東京高検検事長の定年を延長、政権に都合のいい人事を強行したと批判されている。

 側近への求刑が重すぎるーーと大統領から非難されて、司法省があっさり撤回してしまった米国では、検事が抗議の辞職をする騒ぎに発展した。

 政権が検察、司法に口出ししないことは、〝不文律〟だが、実態は違う。韓国でも、青瓦台・法務と検察の対立はいぜん収まらないし、政権が、強大な権を持つ検察をコントロールしたいのは万国共通のようだ。各国の「政治vs司法」のバトルはなお続く気配だ。

(SakuraIkkyo/gettyimages)

定年退職者を検事総長に就ける奇策?

 すでに報じられているが、日米それぞれのケースについて簡単に触れる。

 東京高検の黒川弘務検事長は、63歳の誕生日前日の2月7日に検察庁法22条で定められた規定で退職予定だった。しかし、政府はそれに先立つ1月31日の閣議で、氏の定年を半年間、延長することを決めた。

 黒川氏の在任が伸びる間に、稲田伸夫検事総長が就任2年を迎え、慣例で退職する予定であり、今回の異動は、黒川氏をその後任に就任させる布石ではないかという憶測が広がっている。野党側は、恣意的人事だとして、今月に入って衆議院予算委員会などの場で、安倍首相らを激しく追及している。

 1981年に改正された国家公務員法は、60歳定年、付則でその延長などを規定している。これとは別の検察庁法では検事総長の定年を65歳、ほかのすべての検事は63歳と明記されている(延長についての規定はなし)。81年の国家公務員法改正当時、人事院の担当局長は、検察庁法のこの規定を理由に、検察官は改正公務員法の対象にならないと国会答弁している。

 安倍首相は2020年2月13日の衆院本会議で、1981年当時、検察官については適用除外されると解釈されていたと認めながらも、「検察官も一般職公務員であり、今般、検察庁法に定められた特例以外には国家公務員法が適用される関係にあり、検察官の勤務延長に国家公務員法の規定が適用されると解釈することとした」と政府の立場を説明した。

 にわかに理解するのは難しい説明だ。よく吟味すれば、独自に検察官の定年を決めている検察庁法には延長の規定がないため、延長する場合は国家公務員法を援用するーーということらしい。規定にないことをするために他の法律を借用するのは〝牽強付会〟の印象を与え、野党でなくとも首をひねる向きもあろう。各メディアは「法解釈変更」と報じ、「後付け」(毎日新聞)などという批判もなされた。

〝逆指揮権発動〟との批判も

 黒川氏は法務省勤務が長く、官房長、事務次官などをつとめ国会対策に手腕を発揮、安倍首相はじめ政権幹部の評価が高いが、検察内部では、林真琴名古屋高検検事長が次期検事総長に想定されていたといわれる。こうした事情を考えれば、「いろいろな問題でにらみを利かせる逆指揮権発動ではないか」(2月3日、衆議院予算委員会での渡辺周氏(国民民主)などという非難めいた指摘がなされるのは当然想定されたことだろう。

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