WEDGE REPORT

2019年12月27日

»著者プロフィール
閉じる

樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

(Belus/gettyimages)

 「盗人にも三分の理」ということわざがあるが、この発言だけは笑止千万と言わざるを得ない。

 北方領土問題について、ロシアのプーチン大統領があらためて「引き分け」に言及した。北方4島は、ロシアが不法占拠を続けている日本固有の領土だ。解決方法は、先方の無条件全面返還、日本の全面勝利をおいてほかにない。終戦直後の混乱に乗じてわが国固有の領土を奪った相手との「引き分け」など決してあってはならない。

 大統領がナンセンスな持論を持ち出したことで、ロシア側に本気で解決をめざす誠意がないことがいよいよもって明らかになった。日本政府にとってはこのさい、「2島プラスアルファ」での解決、主権放棄ともいえる方針を投擲し「4島返還」という本来の方針に立ち返るいい機会だろう。

解決望むなら露が「4島返還」すべき

 「引き分け」というのは、双方それぞれが無得点または、同じ得点を挙げ、勝ち負けに至らないことだろう。それはあくまで、正々堂々とした勝負においての話だ。

 人のものを盗んでおいて、「引き分け」をもちかけてくることにも驚くが、それに同意することなど決してあってはならない。盗品を返還させることこそが先決だろう。北方領土にも、この理屈が当てはまる。

 プーチン大統領の発言は19日の年末会見でなされた。

 北方領土問題、日露平和条約交渉について「日本とは引き分けをめざす」(12月20日付、産経新聞)と述べ、一方で、「われわれが解決策を見出そうとしていることが重要だ」(12月20日、読売新聞電子版)と、交渉継続への意欲をのぞかせた。

 「引き分け」「解決策」が何を意味するのか不明だが、本気で解決を目指すのならことは簡単だろう。日本の要求通り、歯舞、色丹、国後、択捉の4島を無条件で返還すればすむ話だろう。

 「引き分け」という表現をプーチン氏が最初に用いたのは、いったん大統領職を退いたあと、復帰直前の2014(平成14)年3月、各国メディとの会見の席だった。

 プーチン氏は、「日本との領土問題を解決させることを欲している」と述べ、柔道の黒帯有段者らしく「われわれは受け入れ可能な妥協を達成しなければならない。それは何か。〝引き分け〟のようなものである」と述べた。

 日本の記者の質問への答えだったが、日本国内では、プーチン大統領の真意を知ってか知らずか、「前向きな姿勢の表れ」などと歓迎する向きが少なくなかった。

関連記事

新着記事

»もっと見る