北方4島のミサイル配備は日本の安全保障
しかし今回、プーチン大統領は19日の会見で「島(北方領土)を含め、日本にミサイルが配備されないという保証がどこにあるのか」(産経新聞)ともいっているというから、「引き分け」は返還拒否の口実にすぎないことをうかがわせる。
ミサイル配備は日本の安全保障の問題であって、「配備されない保証」などロシアに与える筋のものではないだろう。日本固有の領土が返還されたら、どのような自衛手段をとろうとも、日本の自由のはずだ。
大統領はかつて、返還後に日米安全保障条約が適用され、米軍基地が建設されることに懸念を示したことがあるが、日本の施政権の及ぶ地域に条約が適用されるのは当然だろう。
そもそも、いまごろになって、ミサイル配備がどうとかいいだすこ自体、信じがたい。
日本とロシアは昨年11月のシンガポールでの首脳会談で、(歯舞、色丹の引き渡しを明記した)1956(昭和31)年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意しているのだから、日米安保条約への懸念があるなら、堂々と主張すべきだったろう。
ロシアの主張は歴史捻じ曲げる暴論
もっとも、そのシンガポール合意はことしに入ってからのロシアの理不尽な態度変更によって反故同然になってしまっている。19年1月、モスクワで行われた河野太郎(当時)とラブロフ外相(同)の会談で、ラブロフ氏は「(北方領土は)第2次大戦の結果、ロシア領となった」などと言い放って日本側をびっくりさせた。
4島は1945(昭和20)年8月15日の終戦後のどさくさにまぎれてロシアが強奪して現在に至っているのであって、戦争の結果、ロシアに編入されたなどどいう事実はない。歴史をねじ曲げる暴論だろう。
プーチン大統領も3月に、ロシア紙のインタビューに答え、「(領土交渉の)勢いは失われた」「日本は米国との(安保)条約から離脱しなければならない」など相変わらず法外、見当違いの要求を持ち出してきた。
19日のプーチン発言は、これらの延長で、領土返還の意思を否定したとみるべきだろう。