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2020年2月20日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

担当検事が辞表叩きつける

 一方の米国。

 トランプ大統領がツイッターで裁判介入したのは2月11日。ウクライナ疑惑をめぐる弾劾裁判で無罪評決が出た直後だけに「終わると、もうこれか」と眉をひそめた国民も少なくないだろう

 大統領は、偽証罪などで有罪評決を受けた友人のロビイスト、トランプ選対の幹部も務めたロジャー・ストーン氏(67)が、禁固7-9年の求刑を受けたことについて、「恐ろしく不公正だ。本当の犯罪は別なところにある。司法の死だ」と攻撃した。

 その直後に司法省は裁判所に対して「ストーン氏は服役すべきだが、その罪状に照らして7-9年は重過ぎた」として急遽軽減を求めるよう方針を転換した。

 これに怒ったのが、ワシントン連邦検事局の検事。4人全員が抗議して、事件の担当から外れ、そのうちひとりは辞表をたたきつけ、司法省を去った。

司法長官も処分覚悟で批判

 これまでの一連のスキャンダルに関して、一貫してトランプ擁護の姿勢をとってきたバー司法長官も、さすがに不満を抑えきれなかったようだ。ABCニュースのインタビューで、「司法省が捜査する刑事事件、その検事、判事についてのツィートはやめるべきだ」「私の職務遂行を困難にし、高潔性を持って職務に当たっていることを保証することができなくなる」として、大統領を非難、解任などしっぺ返し、処分も覚悟のうえであることをにじませた。

 さきのトランプ弾劾に失敗したペロシ下院議長(民主党)は「法の支配は深く傷ついた」などと攻撃、再び勢いづく様子を見せている。弾劾裁判が終結しても、民主、共和両党の対立は、大統領選の本格化とともに、さらに強まることから、司法妨害があらたな大統領批判の材料となる可能性が強い。

ウォーターゲート事件彷彿

 過去をさかのぼってみると、政権による司法への介入は、決して珍しいことではなかった。

 米国の場合、悪名高い「土曜の夜の虐殺」事件を彷彿とさせる。センセーショナルな名のスキャンダルは、1973年10月、ウォーター事件の過程で起きた。

 司法長官から任命され、事件を捜査していたアーチボルト・コックス特別検察官が、大統領執務室の会話を録音したテープを提出するようホワイトハウスに要請したが、拒否された。コックス検察官は法廷に提訴、政権側は、野党・民主党議員に速記録作成させて提出するという妥協策を示したものの、こんどは検察側が拒否。ニクソン大統領(共和党)は、検察官を擁護するリチャードソン司法長官に詰め腹を切らせたうえ、副長官を解任、長官代理に命じて、やっとコックス検察官を解任させた。

 あまりに強引な手法にメディアや国民が強く反発、事件の幕引きを図ろうとした大統領の目論見が裏目に出た形となり、翌年のニクソン弾劾につながっていく。ニクソン大統領は1974年8月、下院司法委員会で弾劾訴追が決まった時点で、有罪不可避と判断して辞職した。

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