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2020年1月29日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 トランプ米大統領の弾劾裁判が佳境にはいっている。21年ぶりに〝大統領の犯罪〟を裁くにしては、緊迫感に欠けるようだ。無罪評決の結論がみえていることも、その傾向を強めている。

 一方で、興味をそそられるのは、トランプ氏の弁護団だ。ホワイトハウスの法律顧問らに加え、クリントン元大統領を弾劾訴追に追い込んだ当時の特別検察官、妻殺害に問われた元フットボールのスタープレーヤー、O・J・シンプソン氏の無罪を勝ち取った弁護士ら多彩な顔ぶれ。厳粛な裁判というより、〝政治スペクタクル〟というほうがやはり、しっくりくるようだ。

冒頭陳述を行うスター氏(U.S. Senate TV/Reuters/AFLO)

クリントン氏追い詰めたスター氏

 元特別検察官のケネス・スター氏は、1998年1月に発覚したクリントン大統領(当時、民主党)の不倫・偽証疑惑、それ以前のアーカンソー州知事時代の土地開発不正融資疑惑(ホワイトウォーター事件)など氏めぐる一連のスキャンダルを捜査した。

 大統領がホワイトハウスの年若いインターン生と不適切な関係をもった不倫・偽証疑惑では、大統領を連邦大陪審に喚問。この過程で、偽証、証拠隠滅があったとして1999年1月、クリントン氏を米大統領としては2人目の弾劾裁判に引き出した。

 評決(1999年2月)は無罪だったが、1868年のアンドリュー・ジョンソン大統領以来130年ぶりの弾劾裁判だったこともあって、スター氏に対しては、その後、右派を中心に英雄視する向きもある。

 若くしてレーガン政権のスミス司法長官の補佐官、司法次官、ワシントンの連邦高裁判事などもつとめた有能な法律家、1999年の退任後はカリフォルニア州やテキサス州の大学のロー・スクール学部長や学長などを歴任した。

 トランプ弁護団にスター氏が名を連ねていたと聞いたときはおどろいた。

 特別検察官の職を退いた後にインタビューしたことがあるが、氏は当時、自ら主要な役割を果たしたクリントン捜査への「政治的に過ぎる」という批判について、はっきりと否定した。 

 「根拠のない非難だ。私は過去、判事、司法次官としてつねに法を尊重してきた。捜査結果を捏造するなどありえない。捜査対象になった人たちがそういうことをいうのは万国共通だ」―。

 しかし、退官後、FOXニュースなど保守メディアにしばしば登場、トランプ擁護、民主党批判を繰り返し、実際に弁護団に加わったとなると、当時の捜査の中立性に対する疑問が再び指摘されるかもしれない。

 〝ヤメ検〟という言葉があるが、被疑者を起訴してきた検察官が退官後、弁護士に転身、手のひらを返したように被告の擁護することを半ば揶揄したことばだが、アメリカの司法についてもあてはまるようだ。

 もうひとりの特別検察官経験者、ロバート・レイ氏は、スター氏の腹心。その後任として、クリントン氏のホワイトウォーター疑惑の捜査などを継続し、特別検察官代理時代の1997年には、イスパイ農務長官(当時)を汚職の罪で起訴した(98年無罪判決)ことがある。

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