ボルトン証言の是非めぐり駆け引き
トランプ弾劾の〝起訴事実〟にあたる訴追条項のひとつは、ことし11月の大統領選を有利に導くため、民主党の強敵、バイデン前副大統領とその次男が関係するウクライナのエネルギー企業のスキャンダルを捜査するよう、同国の大統領に強要した「権力乱用」。第2は、この疑惑に関して、議会が求めていたる証人喚問や書類提出を拒否するよう命じた「議会に対する妨害」だ。
上院を舞台に検察官役の下院訴追委員と弁護団が、「トランプ氏を罷免しなければ米国の国際的地位を損ねる」(主任検事役のシフ下院情報特別委員長)、「米国史上で最大の選挙干渉」(ホワイトハウスのシポローニ法律顧問)ど応酬。ウクライナ疑惑の経緯をよく知るとみられるボルトン前大統領補佐官(国家安全保障問題担当、トランプ氏によって解任)の証人喚問の是非をめぐって民主、共和両党が駆け引きを展開している。
国論の分裂、いっそう強まる?
弾劾成立・大統領解職には上院(定数100)議員の3分の2の賛成が必要だが、共和党が過半数、53議席を占めているため、可能性は極めて低い。
しかし、今回、無罪評決で決着したとしても、将来、同様の〝弾劾合戦〟が繰り返されるのではないかとの懸念が、米国民の間で少なくない。
トランプ氏に対する弾劾訴追が昨年12月18日に可決された後、年明け1月15日に上院に弾劾条項が送付されるまで〝棚ざらし〟にされたのは、下院のナンシー・ペロシ議長(民主党)が、そうした事態を懸念、手続きを進めることを躊躇していたためともいわれる。議長はトランプ弾劾が取りざたされはじめ昨年春の時点で「弾劾は国家を分裂させる。明確な証拠と超党派で進めることができないかぎりすべきだはない」と慎重な姿勢を見せていた。
弾劾裁判が終了する可能性のある前後の2月3日、アイオワ州で党員集会が行われ、大統領選がスタートする。いつも通り激しい選挙戦となろう。弾劾のしこりも相まって、多くの懸念にもかかわらず、米国の分裂傾向は一層強まるとの悲観的な見方も少なくない。
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