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2020年1月22日

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樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 台湾の蔡英文総統の再選を祝福した日米英各国に中国がかみついた。〝一つの中国〟の原則に反するのだという。しかし、台湾は中国の一部という主張に従えば、台湾総統は〝中国の地方当局者〟であり、祝意を表して何が悪いーということになろう。これに対して、中国は何と答えるか。

  〝中台統一〟の目論見が当面潰えたことによる中国の動揺の表れとみることもできようが、バカげた抗議はともかく、圧倒的勝利で蔡政権の基盤が強化された今回の選挙は、中国に対抗するための「日米台」結束強化への絶好のタイミングだ。日本政府は具体策検討を急ぐべきだろう。

(AP/AFLO)

「台湾の指導者」は「中国の指導者」!?

 選挙結果が判明した今月11日夜、茂木敏充外相は、蔡氏の当選を祝福し、「台湾はわが国にとって基本的な価値観を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する重要なパートナーであり、大切な友人」と関係の重要性を強調する談話を発表した。そのうえで、「台湾をめぐる問題については当事者間の対話により平和的に解決されることを期待する」と、〝武力統一〟も辞さない中国をけん制した。 

 米国のポンぺオ国務長官も「(中国からの)容赦のない圧力にさらされながら、中台関係の安定維持に取り組んできた」と蔡総統を称賛、中国に皮肉をあびせた。
 
 中国外務省の耿爽副報道局長は選挙翌日、外務省のウェブサイトで「台湾の選挙は中国の一地方の問題だ。関係国は『一つの原則』に違反しており、〝強烈な不満〟と断固反対を表明する」と述べ、奇妙な響きの常套句を用いて非難した。

 「一地方の問題」というなら、台湾総統は、一地域の長になるのだろう。その当選を祝うことは、中国の〝地方の指導者〟を祝福することにほかならず、北京がねじ込んでくる理由はない。
 中国は〝へ理屈〟といって怒るだろうが、不当な批判はまともに取り合うべきでない。

蔡総統も日台関係強化に意欲

 蔡総統は当選を決めた翌日の1月12日、日米の代表と相次いで会談した。

 安倍首相の実弟、自民党の岸信夫衆院議員との会談では、中国との対話に前向きな姿勢を示し、「地域の平和と安定を守る」ことに意欲を表明。一方で、台湾に対する日本の窓口機関「日本台湾交流協会」の大橋光夫会長に対しては、「日台関係は〝段階をあげることができる〟」と連携強化に意欲を示した。

 米国の対台湾窓口機関「米国台湾協会」(AIT)のクリステンセン台北事務所長(大使に相当)に、昨年に続くあらたな武器売却、軍事技術供与を求めた。

 安倍首相は1月16日から訪台した日華議員懇談会のメンバーに、蔡総統宛ての親書を託したと報じられており(16日付産経新聞)、自身も関係強化に積極的であることをうかがわせた。
 

蔡政権一期目は進展みられず

 日本政府が今後、具体的にどう関係強化に乗り出すのか、現時点では即断できないが、米国はじめインド、豪州などの勢力に米国の全面支援を得た台湾が加われば、その意義は大きい。

 日台関係を振り返ってみれば、馬英九政権との間では、台湾漁船の操業範囲を定めた魚業協定が締結された実績などはあるものの、蔡政権の1期目4年間は、福島など東日本大震災被災5県の食品の禁輸が継続されるなど、大きな進展がなかった。

 「馬総統は、尖閣問題で強硬な主張をしていたため、〝反日〟とみられがちだったが、決してそうではなかった。むしろ蔡総統は日本に留学した経験もなく、大きなつながり、人脈は少ない。どの程度日台関係に関心をもつか」(丹羽文生拓殖大学准教授)など、甘い期待を戒める分析も少なくない。

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