2024年11月22日(金)

WEDGE REPORT

2020年1月22日

防衛駐在官の常駐も急げ

 ここはむしろ日本側から働きかけを強めなければなるまい。2013年8月、台湾の対日窓口機関、亜東関係協会(現台湾日本関係協会)の李嘉進会長(当時)が同協会トップとして初めて首相官邸で菅官房長官と会談したが、それ以来、久しく途絶えている高官による往来を飛躍的に促進する必要があろう。

 安全保障面で台湾を支援する「台湾関係法」にもとづいて武器供与などを行ってきた米国は、2018年に台湾旅行法を制定した。高官の訪台、台湾当局者が訪米して国務、国防総省などの高官と会談することを容認、促進する内容。これによって中国への配慮が無用となり双方の接触は活発化している。

 日本は台湾と実務関係を維持しているが、それを規定する根拠法が存在せず、交流促進のネックになっていた。台湾旅行法にならって根拠法令を整備するのも一法だろう。法整備が中国の横やりで困難とすれば、現行の枠内で可能か限りの人的往来を拡大すべきだろう。

 日本の防衛駐在官の常駐が懸案になっているが、実現すれば、安全保障面での対話、情報交換は緊密さを増すだろう。将来、「日台安保対話」などの開催も期待される。
 台湾のTPP(環太平洋経済連携協定)加盟が実現した場合、世界経済に与えるメリットは大きく、日本はこれを強く支持すべきだ。
 
 ただ、日台関係の強化はあくまでも米国を加えて3者で実行していくべきだ。
 米国は昨年、台湾に対して「F16」戦闘機の改良型「F16V」を66機、戦車108両など計100億ドルを超える武器供与を決定、総統の要請を受けて今後、上積みを図る可能性もある。台湾の安全保障強化は、日米台を中核とした「自由で開かれたインド太平洋地域」実現に向けて、重みと実効性を与えることになる。

日中の改善は米中関係への〝保険〟

 一方、日本と中国の関係をみると、昨年来、改善に向かっており、ことし春には習近平主席の「国賓」来日が予定されている。好転した日中関係を良好に維持するためにも、中国を刺激するのは得策ではないという指摘があろう。

 しかし、北朝鮮の核問題、日中の経済関係などを考慮すると、中国と安定した関係を維持するのは重要だろう。

 ただ、日中関係が好転したといっても、その基本的な構図が変わったわけではない。米中関係の悪化に危機感を抱いた中国が対日姿勢を軟化させただけで、南シナ海での軍事攻勢、尖閣付近での中国公船の跳梁、チベットでの人権抑圧など中国の行動パターンに変化が生じたわけではない。日本は軸足を変える必要はなく、警戒を怠ることなく対中政策、対台湾政策を同時に進めていけばいいだろう。日台関係は日台関係、日中関係は日中関係だ。
 
 トランプ米政権のもとでの米中関係の将来がどうなるかという問題もある。現在の険悪な米中関係が、いずれかの譲歩など状況次第で、大きく好転する事態もありえよう。1971年の米中頭越し接近のようにだ。

 その場合、日中関係が冷却化していたら、日本は微妙ない立場に追い込まれる。良好な日中関係はそうしたことへの〝保険〟でもある。


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