2024年4月19日(金)

WEDGE REPORT

2020年1月29日

O・J・シンプソン事件で無罪勝ち取る

 弁護団の中で、いっそう関心を引く存在はアラン・ダーショヴィッツ氏だ。

 名門ハーバード大学史上最も若い28歳で教授に就任した秀才。〝セレブ御用達〟の弁護士として知られ、これまで、レイプ事件などの不祥事を起こしたヘビー級世界チャンピオン、マイク・タイソン、O・J・シンプソンのほか、最近では著名な実業家、ジェフリー・エプステイン氏による少女売春強要事件での弁護人をつとめた。 

 エプステイン氏は昨年、有罪判決を受けた後、自殺したが、氏と交友関係のあった英国のアンドリュー王子の名前がとりざたされ、王子が昨年秋、公務から離れることを余儀なくされたことは日本でも報道された。

 この事件では、氏自身、被害者の少女と関係を持ったのではないかとの疑惑もとりざたされているが、これまで殺人またはその未遂事件15件のうち13件で無罪を勝ち取ったというから、まさに無罪請負人というべきだろう。

 ダーショヴィッツ氏の名前を広く知らしめることになったのは、何といっても1995年のO・J・シンプソン裁判だ。シンプソン被告が黒人であったことから、人種偏見に基づいた起訴ではないかと全米で大きな論議を巻き起こしたが、ダーショヴィッツ氏ら弁護団は、警察が偏見に基づいて捜査していたことを示唆する事実を探り出し、無罪判決を勝ち取った。

 氏はその後、この事件に関する著作を出版し、ほかにも、氏が弁護した事件にもとづいて映画が製作されたこともある。

 氏は、もともと民主党支持者。クリントン弾劾に反対し、これまでの選挙で、オバマ大統領(2008年)、ヒラリー・クリントン候補(2016年)に投票してきたという。弁護団に加わったのは、共和党に鞍替えしてトランプ氏を政治的に支持することが目的ではなく、「大統領の権限」、「憲法の高潔性」を守るためだとして、法律家としての立場からであることを強調、報酬も受け取らないことを明らかにしている。

 1月27日の弾劾法廷でも「大統領がどのような行為をしたにしても弾劾に相当しない。国益に沿う政策が、(結果的に)大統領の政治的利益と一致することもある」との自らの法律論を展開した。その本音はともかく、こうした主張は、〝政治裁判〟の色彩を薄め、批判をかわす効果をもたらす可能性がある。


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