インターネットでは受け身にならず能動的に検索をしよう
コロナ禍が収まらない中、アビガンという薬に関する情報が錯綜しています。テレビでは、ニュースであれワイドショーであれ、流されている情報のほとんどは二次情報や三次情報ばかりで、根拠が何なのか、どうすれば検証できるのかがよくわかりません。
インターネット上の情報を受け身で見ているだけでは、webサイトの情報も、勝手によく似た情報ばかりを見せられて情報が偏ってしまったり、SNSでも、信頼性の低い無責任な二次情報や三次情報ばかりを見てしまったりということになりかねません。そのような情報を元に家族や友人と話をしているようでは、デマやフェイクに翻弄されてしまう可能性もあります。
せっかく、インターネットでは色々な情報を検索できるのですから、能動的に一次情報に触れるようにしていくべきです。
パソコンや自動車を購入する際には、カタログでスペック値などの一次情報を検索して品定めをする人が多いでしょう。そういう消費者感覚を持っている人でも、薬に関する情報収集はまだまだ不慣れな人が多いと思います。その理由は、医療界では長年にわたり「専門家に任せておけばよい」とするパターナリズムが広がっていたことや、そのために、患者には使用された薬剤名さえきちんと伝えられてこなかった時代が長かったからかもしれません。しかし最近は、繰り返されてきた薬害の防止に向けた取り組みもあり、様々な情報を収集することができるようになってきました。
今、話題のアビガンがどんな薬なのかを、まずは添付文書から見てみましょう。
PMDAのホームページから薬の正式名称で検索する
薬に関する情報は、様々なサイトから入手することができますが、最も基本的な入口は「PMDA(医薬品医療機器総合機構)」のサイトです。「PMDA」で検索して、そのトップページを開くと以下の画面が出てきます。
そこで、↓で示した「添付文書等検索」の横の「医療用医薬品」をクリックしてください。薬局で販売されている市販薬以外の、医療機関で使われるすべての薬の情報が検索できます。
次の下記の画面の左側の「一般名・販売名」のところに、「アビガン」と入力します。そして、その下の「検索結果一覧で表示する文書を選ぶ」の欄で、「全チェック」をオンにして検索をします。
そうすると、下記の画面が出てきます。この中で添付文書の欄のリンクをクリックしてください。
このようにして、もちろんアビガンだけでなく、病院で使われた薬や、診療所で処方される薬の添付文書などの情報がすべて得られます。なので、自分や家族に使われている、または使われるかもしれない薬の正式名称(一般名でも販売名・商品名でもよい)を知っておくことが大切です。
影響は胎児だけではない。避妊は、女性だけでなく男性も必要
アビガンの添付文書を見ると、いきなり赤字・赤枠の警告欄にたくさんの記載があります。これは異例のことです。
【警告】
1.動物実験において、本剤は初期胚の致死及び催奇形性【筆者注:胎児に奇形が生じること】が確認されていることから、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。
2.妊娠する可能性のある婦人に投与する場合は、投与開始前に妊娠検査を行い、陰性であることを確認した上で、投与を開始すること。また、その危険性について十分に説明した上で、投与期間中及び投与終了後 7 日間はパートナーと共に極めて有効な避妊法の実施を徹底するよう指導すること。
3.本剤は精液中へ移行することから、男性患者に投与する際は、その危険性について十分に説明した上で、投与期間中及び投与終了後 7 日間まで、性交渉を行う場合は極めて有効な避妊法の実施を徹底(男性は必ずコンドームを着用)するよう指導すること。また、この期間中は妊婦との性交渉を行わせないこと。
つまり、胎児の催奇形性が確認されているので妊婦は使用不可。精液にも移行することから、投与終了後7日間は男女とも避妊することとなっています(ただし、7日間でいいのか、ということについては後述します)。
また、警告欄には下記の記載もあります。
4.治療開始に先立ち、患者又はその家族等に有効性及び危険性(胎児への曝露の危険性を含む)を十分に文書にて説明し、文書で同意を得てから投与を開始すること。
この薬の使用にあたっては、きちんと文書で説明し文書で同意を取ること、とされています。これができていない医療機関があれば問題です。