2024年11月22日(金)

ウェッジ新刊インタビュー

2012年6月18日

著者:金田康正氏 (撮影:ウェッジ書籍部)

 アメリカでは博士号を取ろうが取るまいが、プログラミング能力に長けていれば、軍需産業を筆頭に必要とされる仕事がたくさんあります。一方日本では、プログラミング能力に優れている者でも、博士号などの肩書きが重んじられ、大学や研究所への就職を志向する傾向があります。

――アメリカでは社会的な実利益と直結しているものをどれだけクリエイトしているか。また、いかに研究資金を獲得できるかということが大きいのでしょうか?

金田氏:それはありますね。大学にもよりますが、日本とは違いアメリカでは獲得した研究資金のうちの何割かは自分の収入にできます。また、民間企業で独創的な計算機をつくろうとする場合など、マッチングファンドと言って政府と民間でお金を出し合います。そういうスキームがありとあらゆるところにあるので実利に直結している部分があると言えます。

――先生はケンブリッジ大学での客員研究員の経験がありますが、ヨーロッパでの計算科学を取り巻く状況というのはいかがでしょうか?

金田氏:アメリカと違ってヨーロッパでは、モノの本質を見極める傾向が顕著な気がします。

 たとえば、現在携帯電話やiPhone、iPadなどで利用されているARMというプロセッサーがあります。これは1980年代前半に、ケンブリッジ大学郊外にあるケンブリッジ・サイエンス・パークで産声をあげたもので、そのアーキテクチャーはアメリカのインテル社のものとは性格がかなり違います。産業としてお金になるかどうかは別として、ヨーロッパでは何か次の斬新な発想を生み出しそれを実用化しようとするような傾向が強いように感じます。

――そのような先進的な開発をするためには、日本ではどのような環境整備が必要でしょうか?

金田氏:そのためには評価の仕方を変える必要があります。ひとつには、優れた研究者に名誉ある賞を与えて、公平かつ公的な評価をすることです。


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