2024年12月4日(水)

オトナの教養 週末の一冊

2012年6月22日

 そうまでするのには、わけがある。それは、グローバル経済がもたらした食システムが早晩破綻するという著者の強い危機感だ。

 「私たちが望む望まないにかかわらず、危機は鳥インフルエンザの大発生や、インドや中国での大凶作、または北アフリカでの河川の氾濫や、原油価格の高騰など、何らかの予期せぬ形で表面化し、それが食品流通を遮断し、食システムに壊滅的な影響を与えるだろう」という予測に対する焦燥である。

より大きな戦略的展望の中で

 「食システムには、この先十年間のうちに解決しなくてはならない問題が山積している」と、著者はいう。

 <たとえば、有機か合成か、企業農場か自営農場か、地元か世界か、多様性か単一栽培か、また、栄養と肥満、食の安全、そして食料安全保障に関する議論など、今まで政治運動と業界の圧力によって隠されてきた様々な問題が、真に公共的なプロセスの中で議論をされ、何らかの結論を得なければならない。これらの問題は単にコストと利益といった視点で論じられるものではなく、より大きな戦略的展望の中に組み入れられるべきものである。> 

 この主張には、まったく同感である。たとえば、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉参加をめぐる議論ひとつとっても、こうした視点が必要なのではないか。

 私が手にしたのは第3刷だったが、不適切な「てにをは」や誤字脱字が少し気になった。このテーマなら、原書で読んでも面白く読めそうだ。

 それはともかく、本書を読めば、来週からのニュースが深読みでき、さらに興味深くなるに違いない。人によっては、肉嫌いになるかもしれないが。

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