世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年9月10日

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 8月9日に行われたベラルーシの大統領選挙では、現職のルカシェンコが得票率8割以上で当選したとの公式発表がなされたが、この結果は不正であるとして、首都ミンスクでは抗議運動が続いている。2006年、2010年にも不正な選挙への抗議デモがあったが、ルカシェンコはこれらを抑え込んで、大統領の座にとどまり続けてきた。しかし、今回の抗議運動は、これまでで最も強いものである。2014年のウクライナにおけるマイダン革命(ヤヌコビッチ大統領が失脚)を想起させるようにも見える。

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 クリストファー・ハートウェル(ポーランドのコズミンスキー大学教授)は、‘Belarus Has Finally Had Enough of the ‘Last Dictator in EU rope’’と題する論説を8月23日付けウォールストリート・ジャーナル紙に寄稿し、ベラルーシ情勢と西側の対応の在り方を論じている。

 ハートウェルによれば、ウクライナのマイダン革命とベラルーシの抗議運動は、次の点で異なるという。第1に、抗議は親EUではない一方、明示的に反ロシアでもない。EU加盟は普通のベラルーシ人に魅惑的と思われていない。第2に、マイダンは首都キエフの現象であって、ヤヌコヴィッチに投票したウクライナ東部では熱烈に支持されなかったのに対し、ベラルーシではミンスクはルカシェンコの権力の要塞である。しかし、ベラルーシ全土に広がる抗議はルカシェンコに相当な脅威を与え得る。

 論説は、西側は、ベラルーシでマイダン2.0が起こっているという警戒心をクレムリンに抱かせないようにしながら、自由で公正な選挙への明確な支持を伝えるべきである、ベラルーシには多くの問題があるが、今はルカシェンコ問題という一つに絞って対処すべきであり、ベラルーシが欲してもいない欧州化を推し進めるのではなく、ベラルーシでの民主主義をしっかりさせるべきである、と説く。

 この論説は、ベラルーシ情勢について貴重な視点を提供していると思われる。ベラルーシ情勢が今後どう発展するかはまだよく見通せない。しかし、ルカシェンコ政権はほぼ終わりに近づいていると考えてよいのではないかと思われる。

 ベラルーシ情勢にとっては、ロシアがどう出るかが重要である。プーチンが、国民の信を失ったルカシェンコを支持しベラルーシ国民の反発を買うようなことは愚策であると考える可能性はある。ベラルーシ人は上記の論説が指摘するように親ロシアの傾向が強く、ウクライナのように民族主義がそれほど強くない。反ロでもなく、親EUでもないベラルーシをロシアとしてはそれほど警戒する必要はない。 親ロシアの政権であれば、それでいいということではないかと思われる。

 ただ、ロシアの中で、民主主義的ベラルーシはロシアの体制への脅威になるという議論もあり得る。EUはそういう勢力を強化しないように、 今ミンスクで起こっていることはマイダン革命 2.0ではないという姿勢を貫くべしとの、上記の論説の主張は適切と思われる。

  
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